三菱電機、「情報流出」「過労自殺」が相次ぐ事情 縦割り組織や風通しの悪い風土が遠因に

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防衛情報の流出可能性を発表したのと同じ2月10日には、製品の出荷検査不備も明るみに出た。パワー半導体製品の一部で、顧客と取り交わした規格どおりの出荷検査を行っていなかったのだ。

パワー半導体は家電のほかに、電鉄や送電などのインフラ関連でも使われている製品で、出荷検査の誤りは2014年11月から2019年6月まで5年近く続いていた。出荷検査不備は2019年6月下旬にパワーデバイス製作所で品質管理の見直しをしている最中に判明。三菱電機は「検査規格値よりも高い許容範囲をもつように設計しているため、機能や安全性に問題ない」と説明しているが、問題は顧客への報告が発覚から半年以上後の2020年2月上旬まで遅れたことだ。

顧客への報告が半年以上もかかった理由について、三菱電機は「パワーデバイス製作所を管轄する半導体・デバイス事業本部へ報告があったのは7月上旬で、そのときに顧客へできるだけ早く報告するよう指示があったが、対象の顧客向けの全製品を確認するのに時間を要した」と説明している。

子会社で仕様不適合製品を出荷する過去も

三菱電機は過去にも不適合な製品を出荷するトラブルを起こしている。2018年には子会社のトーカン社が契約仕様に適合していない製品を出荷していたことが判明した。製造委託元と契約した仕様に満たないゴム製品を、少なくとも10年にわたって出荷していた。その問題を受け、2018年12月から2019年3月まで、国内の全事業所と子会社121社を対象とする品質保証体制の再点検を行っていた。

再点検の過程で、子会社の菱三工業が仕様不適合の鋳造製品を出荷していたことも発覚した。こうした事態を受け、2019年8月に品質保証体制を強化していくとしていたが、新たにパワー半導体の出荷検査不備が続いていたことが発見され、発覚後も顧客への報告が遅れた。検査要領書の改訂を担当する部門が改訂を怠り、改訂の確認行為も不十分だったために、実際の検査を担当する部門が旧規格のままで検査を継続していた。

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