ボルネオで奇跡の復活「元名鉄特急」数奇な歩み 北アルプスから会津へ、そして南国の島へ

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その後「8503」も整備を終え運用に入るようになったが、ちょうど入れ替わるように「8502」に車両故障が発生し、本来の2両編成で営業運転する予定はお蔵入りになってしまった。

1両で運転していた頃の8503(筆者撮影)

キハ8500系の導入に合わせて1往復設定された「ファーストクラス」列車も、料金が一般列車の約3倍もする割に観光客には不便なダイヤで、乗客数が伸びずにわずか1年弱で廃止されてしまった。

さらに追い打ちをかけるかのごとく、2019年には長雨で車両基地が浸水し、車両の床下が水没するというニュースもあり、その後の去就が案じられる事態になってしまった。

復活を遂げた2両

だが、キハ8500系は再び蘇った。2019年9月、マレーシアの鉄道愛好家が2両編成に復活しているのを目撃。サバ州立鉄道での修繕作業の結果、2両ともにみごと復活を遂げたのである。

2両編成で復活したキハ8500系(筆者撮影)

ただ、残念ながら定期運用はなく、一般列車の代走か、ツアー客の貸し切りが入ったときに臨時列車として走るくらいしかお目にかかる機会はなさそうである。とはいえ、一期一会のアジアの鉄道である。修繕されたと言え、またいつ何が起こるかもわからない。

今回紹介している2両編成の写真は、復活の報を受け、有志で貸し切り運行を行ったときのものである。1両はエンジンを動かさずにトレーラー扱いにしているのではと勘繰ったが、ジャンパ栓で2両はしっかり繋がり、運転台機器の表示も2両編成と認識しており、カミンズ製エンジンの唸りも高らかに軽快な走りをみせてくれた。車両は傷みも少なく、今のところ良好な状態を保っている。

願わくは、「兄弟たち」も追って海を渡って、久々の再会を果たすのを見たいところではあるが、導入経緯や現状を見る限り難しいであろう。引き続きのメンテナンスや保守部品の調達に不安な部分はあるものの、末永い活躍を期待したい。

高木 聡 アジアン鉄道ライター

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たかぎ さとし / Satoshi Takagi

立教大学観光学部卒。JR線全線完乗後、活動の起点を東南アジアに移す。インドネシア在住。鉄道誌『鉄道ファン』での記事執筆、「ジャカルタの205系」「ジャカルタの東京地下鉄関連の車両」など。JABODETABEK COMMUTERS NEWS管理人。

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