関税削減で劣勢のWTO交渉 日豪FTAで重大な影響も

WTO農業交渉では、米・EU寄りの議長案。FTAでは韓国の動きに産業界の焦燥感が強まる。
(週刊東洋経済2月23日号より)

 農産物市場の開放を目指すWTO(世界貿易機関)のドーハ・ラウンド農業交渉が、ヤマ場に差し掛かろうとしている。

 2月8日、農業交渉の責任者を務めるファルコナー議長は、関税引き下げなどのルールを定める基準案(モダリティ案)の改訂版を各国に提示。3月下旬から4月にかけての閣僚交渉を経て、年内を目標に農業交渉の最終合意を目指している。

 今回の議長案改訂版では、一般品目と異なる扱いの「重要品目」を含めた関税の平均削減率として、54%という数値目標が初めて打ち出された。これは、前回のウルグアイ・ラウンド合意(36%)を上回る水準だ(改訂版の主な内容は右表)。

 また、米国が求めてきた「上限関税」(関税率に一定水準の上限を設け、すべての関税をその上限以下に引き下げる手法)の導入は盛り込まなかったものの、代償措置として100%を超える高関税品目が4%以上残る国には、低関税輸入枠の追加的拡大を義務づける内容が記されている。わが国は100%を上回る高関税品目が4%以上あるため、議長案を受け入れた場合には、コメや小麦、乳製品など重要農産物の低関税輸入枠を増やさざるをえなくなる。

 そして議長案改訂版では、特別扱いが認められる重要品目の数は、有税品目または全品目の4~6%に抑制する考えが打ち出されている

 重要品目の数について、日本や韓国、スイス、ノルウェーなどの食料輸入国(G10)は「全品目の10%以上」を求めてきたが、米国とEU(欧州連合)が全品目の4~5%に抑制することで一致しているといわれる中で、議長案も米・EUの考えに近い数値になっている。

 このような一連の事実から、「日本のようにコメなど一部の重要品目の関税率が極端に高い一方、野菜やくだものなどそれ以外の品目がおしなべて低い国には、不利な案になっている」と、WTO農業交渉に詳しい鈴木宣弘・東京大学大学院教授(農業経済学)は指摘する。

 食料輸出国の輸出制限措置について、既存の制限措置の廃止とともに、新規措置も原則12カ月で廃止する旨が盛り込まれたことは、日本の主張を取り入れた形で一歩前進とされる。ただ、「極端な不足など有事の際には国内供給が優先され、禁輸が行われる。それをWTOルールで規制したとして、どれだけ実効性があるか疑問だ」と鈴木氏は付け加える。

 以上で述べたように、特に関税率の引き下げで、日本は厳しい対応を求められている。

合意は難航が必至 先進国vs.途上国で対立

 それでは、農業交渉はすんなりと合意に向かうのだろうか。各国の事情を見ると、必ずしもそうとは言い切れないのが実情だ。

 EUは一般品目の関税で、日本と同様に低い削減率を求めている。EUの場合、日本のように突出して関税が高い品目はあまりないが、平均では日本(12%)の倍近い20%(2000年の平均関税率、貿易量を加味しない単純平均)に上っており、いかに削減の幅を小さくするかが最重要の関心事項となっている。

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