権益に固執するメディア、記者クラブが日本の情報発信を阻害する-上杉隆
ニューヨーク・タイムズ東京支局は特派員の数を減らし、ワシントンポストは東京支局を支局長宅に移設し、ロサンゼルス・タイムズは日本から完全に撤退した。すべてここ1年で起きたことである。
欧州やアジアの新聞も同様である。今や世界中のメディアが日本から逃げ出している。
戦前からの長い期間、先の大戦の最中ですら、通信員を置き続けてきた3大米紙の日本撤退(縮小)は何を意味するのか?
それは、単に本社の経営問題だけが理由ではない。それならば、各社が厳しい財政事情の中、中国や朝鮮半島に新たに支局を開設していることの説明できない。
実は、東京支局の撤退・縮小の背景には、日本社会ではタブーとなっている記者クラブ問題が関係しているのだ。
筆者が記者クラブ問題の異常性に最初に触れたのも、実はニューヨーク・タイムズ東京支局で働き始めてからだった。海外メディアの特派員たちが、異口同音にののしる先が、日本の一流メディアだったことにまずは驚いたことを鮮明に覚えている。
普段、ユーモアたっぷりで冷静な物腰の特派員までもが、日本の同業者の話になると途端に感情をあらわにし、非難の言葉を浴びせるのだ。それは当初、不思議な光景だった。
ところがFCCJ(日本外国特派員協会)の記者たちが温度差こそあれ、一切の例外なく記者クラブを批判していることを知ると、その問題の大きさに愕然としたのであった。
私自身、それまで一流だと信じていた日本のメディアへの強烈な批判を聞いて、正直、不快に感じたものだった。だが、同業者を同業者が排除するシステムが、世界中のどこに行っても存在しないことを知ると考えが変わる。それは利害関係者でさえなければ、空想上の笑い話として片付けてしまえばいいことだった。