田舎暮らしで「失敗する人」と「成功する人」の差 多くが決断できない狭き門で楽しむ極意

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ある男性は、「インテンシブセイビング」という形で給料の7割以上を貯金に充て、数千万を貯めて早期退職、田舎への移住を実現した。2拠点居住という形で住んでいた都市部の家も維持しており、田舎での生活が行き詰まった場合には、元の家に戻る「退路」も用意しているという。退路を絶って移住する人もいるし、2拠点生活という形でプチ移住する人もいる。

退職後に大阪から北海道に移住した男性は、夏には山小屋でアルバイトしたり、果樹農家で収穫作業を手伝ったりして、年金もあることから貯金ができてしまうぐらい。あちこちから手伝いを求める声がかかり、趣味の釣りに割く時間が少なくなっているのが悩みの種だ。

田舎暮らしは意外と忙しい

田舎に移住した人たちの生活は、意外と忙しいという。怠け者では田舎暮らしは務まらない。老朽化した古民家なら維持管理のための作業は尽きることがない。夏には庭や畑、空き地に生い茂る雑草との闘いになる。畑を耕したり、キノコを栽培したり、鶏を飼ったりすると、時間はいくらあっても足りない。食料の確保を含め、何でも自分でやってしまう開拓者的な精神が重要だ。

今は田舎であっても高速インターネットと接続し、情報を入手したり、発信したりするのは容易。雇用の場がなければ、自ら収入源をつくる工夫も必要だ。動画サイト「ユーチューブ」で田舎暮らしのネタを発信し、月収100万円を超すような収入を得る若者もいる時代だ。

老後や親の介護、病気など現代人の不安は尽きない。都会から田舎に移住した人たちは、こうした不安を財力や行動力、決断力、ある種の諦めによって乗り越えられたからこそ、実現できたと言えよう。

田舎暮らしは、人間関係や地域の煩わしいしきたりなど都会生活と比べれば、大変なことも少なくない。都会のように文化的な楽しみも限定的だ。だからこそ、創造性を駆使して自らの生活を豊かにデザインして、他人や世の中の価値観に流されないたくましさが求められる。そして、自然の美や恵みを感じ、今ここに在ることを楽しめる人だけが、田舎暮らしの成功者になれるのではないだろうか。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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