新幹線に近鉄…座席で喫煙できる列車が消える 喫煙ルームで一服することは可能だが…

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今でこそ禁煙が当たり前となったが、昔はたばこが吸えるほうが当たり前で、鉄道では禁煙車が設定されて分煙化が始まり、時代が進むにつれて禁煙車の割合が増えていった。国鉄・JRでは1976年8月から東海道・山陽新幹線の「こだま」で禁煙車が導入されて、1980年に「ひかり」にも拡大、その後は在来線の列車にも拡大していった。

ちなみに、喫煙室は大正時代に作られた寝台車や食堂車で見られるので、歴史はもっと長い。

分煙になったことで、喫煙できる車両に愛煙家が集まったのだが、たばこの煙は愛煙家ですら敬遠したがるというくらいで、喫煙車両だけたばこの煙で車内が曇っていたのを覚えていらっしゃる方もいるのではないだろうか。JRをはじめとする各鉄道会社でも、喫煙車両に空気清浄機を設置するなどの対応を行っていたが、同時期に喫煙車両の設定自体をやめて全面禁煙とする流れとなっている。

意匠と思ったら「ヤニ汚れ」

全面禁煙としたのを嫌煙家としては歓迎するべきかもしれないが、ここで困ったのがヤニの臭いだ。禁煙車と喫煙車両の車内を比べると、喫煙車両では内装が薄茶色となっていたことが多く、これがデザインかと思いきや、実はヤニ汚れだったという笑えない話もある。

ヤニ汚れは清掃すれば消えるが、元がたばこの煙である以上、細部まで染み込んでしまうのが実情で、列車を全面禁煙にしたにもかかわらず、車内に染みついたヤニの臭いが苦情の種となる。ある鉄道会社では、内装をいったん剥がしてまで徹底した清掃を行ったが、完全にヤニ汚れが取り切れなかったようで、かすかな臭いで苦情になってしまったという。

先の近鉄では、喫煙室の設置や新塗装への塗り替えの対象にならなかった車両(12200系)があり、全面禁煙後も使用されて一部の車両は喫煙車両だったものを禁煙車として使用することになるが、喫煙席として使用していた車両は2020年3月中旬までに順次整備を行う予定で、それまでは切符の発売をしないという。整備をした後も、先の「ひのとり」80000系の導入によって2020年度までに引退が予定されている。

たばこを吸わない筆者のような人間でも、昔はたばことの関わりがあって、アルバイト先で先輩のたばこを買いに行ったり、先輩や同僚が使った灰皿を掃除したりすることが自然だったと思っている。だが、同じアルバイト先の後輩は、「たばこが嫌いでたまらず、灰皿の掃除など考えられない」と話していた。たばことの関わり方は人それぞれだが、「ちょっと一服」が相当やりづらい時代になったことは確かであろう。

柴田 東吾 鉄道趣味ライター

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しばた とうご / Tougo Shibata

1974年東京都生まれ。大学の電気工学科を卒業後、信号機器メーカー、鉄道会社勤務等を経て、現在フリー。JR・私鉄路線は一通り踏破したが、2019年に沖縄モノレール「ゆいレール」が延伸して返上、現在は車両研究が主力で、技術・形態・運用・保守・転配・履歴等の研究を行う。『Rail Magazine』(ネコ・パブリッシング)や『鉄道ジャーナル』など、寄稿多数。

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