動き出すSL銀河、飛躍への期待と課題 東北復興の起爆剤へ、42年ぶりに復活

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「SLに乗って、ぜひ現地の様子を見に来てほしい」と、釜石市の菊池公男・観光交流課長は言う。40年ぶりに復活したSLは、釜石復活のシンボルとしても期待されている。

観光資源化には課題山積

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沿線では歓迎ムードが高まっている

とはいえ、そこにはいくつかの課題がある。SL銀河の運行は週1往復。土曜日の午後3時04分に釜石に到着し、日曜日の10時55分に釜石を出発する。「市内観光や沿岸部まで足を延ばすことを考えれば、土曜日の夜は市内に宿泊していただくことを期待している」(菊池課長)。

だが現在、釜石市内の宿泊施設は復興工事関係の作業員たちで、連日ほぼ満室の状態だ。今年7月にはルートイン、来年3月にはJRも釜石駅前にホテルをオープンする。ただ、「まとまった空室が出ると、建設業者が長期で押さえてしまうケースも多い」(地元のホテル関係者)という状況で、ホテル需給の逼迫は当面続く。

NHKの朝ドラ「あまちゃん」で有名になった三陸鉄道の南リアス線(釜石―盛間)が4月5日に全線復旧する。釜石に到着したら、三陸鉄道に乗って沿岸部を訪れたい人もいるだろう。だが、復旧後の三陸鉄道とSL銀河の接続はスムーズではない。1時間強の待ち時間を余儀なくされる。

釜石周辺の観光スポットへのアクセスもよいと言いがたい。自動車がないと行けない場所もあり、定期バス投入によるアクセス改善などが求められる。

「乗って楽しめる」SL銀河が、釜石の新たな観光資源になることは間違いない。だが、鉄道だけでは観光が成り立たない。SL銀河で釜石駅に到着した観光客が、ろくに観光せず、その日のうちに帰ってしまうことは、釜石市としても避けたいはず。地元観光業界や他の交通機関も巻きこんだ、あらゆる側面からの議論が必要だ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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