「理系の就職」で抱えるジレンマに対処する方法 キャリアの方向性をどのように決めるべきか

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といいますのも、現実問題として職業人としてのキャリアパスもご自身の人生もそうですが、自分自身に係る要因と外部要因の2点に大きく左右されることになります。

自分自身の要因というのは、経験を通じて視野が開けることにより、自分自身の考え方や価値観が変化することに伴う変化や、家族ができたり病気になったといった自分個人に係る環境変化のことです。そして外部要因というのは、周囲からのご自身に対する評価や期待の変化や、経済環境であったり、勤務先の状況、社会的な価値観の変化など、自分を取り巻く環境の変化だとします。

いずれの変化も、現時点では想定できないことであり、なおかつそういった内部・外部環境の変化というのは、自分自身の仕事をするうえや生きるうえでの行動や考え方に変化をもたらします。大切なことは、そういった環境などの変化に応じて臨機応変に自分自身の行動や優先順位を変えていけるか否かであり、「昔考えていた正解」に固執することではありません。

「柔軟性」を持っていることが大切

先ほど大まかな方針と言いましたが、例えばその大まかな方向性や方針は変えずに、達成手段を環境の変化などに応じて変えていく、または状況の変化に応じて方向性や優先順位をアップデートしていく、そういった柔軟性が必要でしょう。

ご存じのとおり、私たちの生活や仕事を取り巻く環境はものすごい勢いで変化しています。昨日までの正解や常識が長きにわたって正解や常識であり続けるとは限らないわけです。そういった状況であるがゆえに、自分自身の優先順位や価値観を時代に合わせて、または自分の成長に合わせてアップデートしていく――。そういった柔軟性を持っていることが、不確実性への対応という意味では非常に大切なのです。

現時点において自分が幸せであるか、または幸せに向かって歩んでいると感じられるかどうかが重要なのであり、自分が考え設定した古いレールを歩み続けることは多くのケースで重要ではありません。

研究のプロを目指すか、リーダーを目指すか、とありますが、その選択は何も今決めてしまう必要はないでしょう。化学という分野で勝負してみる、という大きな方向性さえあれば、将来その分野でプロにでもマネジメントにでもなれるように今何をするべきかを考え行動することでまったく問題ないと思います。

どちらを選択するにせよ、短期的にはその化学の分野で、化学メーカーの社員として何かしら結果を出すことが大切であり、多くいるであろう同期や先輩をいかにして追い越し、会社や業界の中で自分というアイデンティティーを確立していくことを優先するということでいいのではないでしょうか。

プロを目指すにせよ、マネジメントにせよ、その根底にあるべきものは業界や会社に対する理解や経験であり、人間関係の構築力など共通する部分は非常に多いはずです。まずはそういったベースをしっかりと固めたうえで、その先どうするかをじっくりと考えるというスタンスでもいいのです。そうやって仕事に真摯に取り組む中で、自分の中で何を優先したいかが確立されてくるでしょうし、周りからの評価や期待も固まってくるというものです。

まだこれから仕事をするという年齢ですから、まずはそうやって将来自分が現実的に持てるであろう選択肢を増やせるような行動に注力してみてください。

選択肢が1つしかないと、自分自身や外部環境の変化には対応できません。まずは基礎となる幹の部分をしっかりと鍛えることに注力してみてください。その部分がしっかりとしていれば将来どんな花でも咲かせることができるはずです。

留夷子さんが今後の社会人生活を通じてご自身の歩むべき道を徐々に絞り、着実に成長していくであろうことを応援しております。

安井 元康 『非学歴エリート』著者

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やすい もとやす / Motoyasu Yasui

MCJ社長兼最高執行責任者(COO)。アニメーションの企画・制作を手掛けるベンチャー企業を経て、MCJにて東証への上場を経験。その後、経営共創基盤にて戦略コンサルタントして9年間活躍し、2016年3月にMCJに復帰。著書に学歴コンプレックスに悩みながらも独自の方法でキャリアを切り開いてきた様子を描いた『非学歴エリート』(飛鳥新社)や、自分ならではの人生を生きる術を描いた『極端のすすめ』(草思社)等がある。

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