安倍インド訪問延期、新幹線輸出に何が起きた? 草の根から始めても開業までには紆余曲折

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新幹線の海外展開の第1号として、2007年に開業した台湾の高速鉄道は現在どのような状況なのか。主力車両の「700T」は製造から10年以上が経過し、更新時期が迫りつつある。

台湾高速鉄道の700T(記者撮影)

高速鉄道を運営する台湾高速鉄路は利用者増に伴う将来の車両不足に備え、2017年に700Tの追加調達を検討したが、必要な部品を調達できず断念した(2017年12月18日付「台湾新幹線、『たった4編成』国際入札のナゼ」)。700Tは東海道・山陽新幹線を運行する「700系」をカスタマイズしたもので、川崎重工業、日立製作所と日本車両製造の3社が製造した。

しかし、700系は2020年3月に東海道新幹線から引退し、7月には新型新幹線「N700S」の営業開始が決まっている。メーカーは700Tを新規製造しようにも適合する部品がないという状態だったのだ。このため、台湾新幹線の増備は将来の700Tの本格置き換えと同じタイミングで行うことになった。

新車はN700Sがベースに?

一時経営危機に陥った台湾高鉄は政府の出資を受け入れている。そのため、車両を新規調達する際は国際入札を行う可能性が高い。仏アルストム、独シーメンス、中国中車などの世界の大手メーカーも参入をうかがう中、700Tが安全・安定運行を行っているという実績を武器に、日本勢が受注の最右翼と目されている。その場合、新型のN700Sをベースに車両開発を行うのは間違いないだろう。

16両編成が基本の700系を台湾仕様の12両編成にカスタマイズする際に、ベースとなった700系の製造コストに比べ、700Tのコストが割高だという点が一部で問題視された。その点を考慮してか、N700Sには1編成当たりの車両数を柔軟に設定できるという特徴がある。改造コストが高いという批判はある程度抑えられるだろう。

N700Sを製造するのは日立と日車の2社。順当に考えれば、台湾向け車両を製造するのもこの2社ということになるはずだ。日立は2019年12月6日に、英国・西海岸本線向けの高速鉄道車両23編成の製造と保守を受注したと発表した。2015年に買収したイタリアの鉄道車両メーカーも高速鉄道に強みを持つ。日立は世界各国で高速鉄道の実績を着実に積み上げている。

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