ソニーがエンタメで描く「2020年の事業プラン」 吉田CEOが掲げた「人に近付く」コンセプト

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勝本氏はレンズ交換式カメラ事業を立ち上げた後、メディカル領域に注力していた。

勝本氏自身「B2B領域は課題について深く理解する必要があるため、強みを一度持つことができれば、長く安定した事業につながる。要素技術はさまざまな事業で使えるという実感はあるが、事業ごとにある程度のカスタマイズは必要」と認めたうえで、コンシューマーに関しては、まったく別の切り口での投資戦略があると話す。

現在のソニーは“正常化”を終えて、次の成長に向けた投資フェーズに入っているといえる。そこでのコンセプトは、「人に近付く」というコンセプト。社長兼CEOの吉田氏もたびたび挙げている言葉だ。

では「人に近付く」というのは、何を意味しているのだろうか。それは距離なのか。それとも感覚や感性といった領域なのか。

テクノロジーでエンターテインメントの世界を描いてきたソニーにとっての「人に近付く」とは、当然ながら後者だ。

「デジタルメディアは単純なオーディオ&ビジュアルの領域を超えて、VR(仮想現実)や360度オーディオなど多様化しています。私たちの強みは、人の感性に訴えるあらゆるアプローチに関して、すべてリアルタイムで問題解決する技術を持っていること。あらゆるメディアのリアルタイム技術に投資して“クリエイティブエンタテインメントカンパニー”としてのソニーをさらに前進させます」(勝本氏)

クリエーターとコンシューマーの両者にアプローチ

たとえばVR技術。昨今、VRディスプレーも随分と見慣れた気がしてきたが、現在のままで大きく飛躍することはなくとも、将来的に仮想現実をよりカジュアルに楽しめるようになるだろうことは薄っすらと想像できるかもしれない。

実際、ソニーもプレイステーションVRでコンシューマー向けVRに取り組んでいるが、実はクリエーター向けの実用的なVR技術を昨年から本格運用しているという。

カリフォルニア州カルバーシティにあるソニーイノベーションスタジオは、VR技術を用いた新しい“撮影スタジオ”だ。

このスタジオで展開しているのは、現実の撮影セットを3Dスキャンし、すべてCGだけで再現する技術である。セットの細かなディテールをあとから変更可能で、撮影後に修正や作り込みを行うこともできる。

トータルでの撮影コストを下げられるだけでなく、再撮影時にセットを壊している場合などにも対応できるため、実際にはCGセットを使わない場合でも3Dスキャンを施す場合もあるそうだ。

「あらゆる要素を3Dスキャンして配置できるため、あとは合成のためのグリーンの背景の前で演じればいいだけです。たとえばメン・イン・ブラック:インターナショナルの場合、ロンドンにセットを作っていましたが、すべて3Dスキャンを行っておき、プロモーション用の映像はCGセットで行っています。やろうと思えば、本編の役者を途中から入れ替えることも問題なくできます」(勝本氏)

ソニーイノベーションスタジオの撮影現場(写真:Sony Corporation)
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