出張族が考えた、すごいビジネスホテル ホテル龍名館東京、驚きの”ストーリー戦略”

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――個人個人でいくら創意工夫をしてもですね。

そうですね。若いスタッフが立場を超えてセッションできるような仕組みとして、複数のプロジェクトを立ち上げました。それに参画させることで、自分たちでこのホテルを企画しているとの意識づけを明確にするためです。

誰しも、自分で考えたことには饒舌になります。たとえば料理人はホールサービスしないことがほとんどですが、お客様のところで料理を説明させると、すごく饒舌になります。そういう体験をすべてのスタッフにさせることで、より接遇レベルが上がって行きます。

われわれは格式の高いホテルを目指しているわけではなく、旅館なのでフレンドリーに、お客様に親身に接する。よりヘルプフルであることが、われわれのサービス、ホスピタリティのテーマなのです。

アメニティやサービスのスタイルを若手の彼ら自身に考えさせることで、よりお客様に饒舌に、積極的にサービスできるようになっていく。

やっぱり、見どころは玉子料理

――レストランは和食のブッフェですね。

そもそも私どもは日本料理しかやっておりません。ですから日本料理を売りにしていかざるをえない。ほかのジャンルの朝食をやっているホテルは周辺にたくさんありますので、商品開発の中でわれわれは和食ブッフェを中心にしていくと決めました。

15階の和食レストラン「花ごよみ」。ランチブッフェは1500円でお得

朝はみなさん非常に急いでいらっしゃるので、なるべく気軽に自分の食べたい分だけ選べるようにしていこうと。そして和食である以上は、健康的でバランスのよいものを提供していこうという考え方です。

当時は総菜ブッフェ・ブームで、割と和食的なブッフェが出始めていましたが、われわれは日本料理の職人がいる強みを生かして、総菜というより日本料理を軸にしています。

なるべくシンプルなところに差が出るようなものが、われわれの自慢です。よく洋食のシェフの力の差が出るのがオムレツだと言われるように、われわれの売りも実は玉子焼きだったりするんですね。

工場で作った出来合いのものではなく、ライブで職人が作った出し巻き卵のおいしさを味わっていただきたいというのが、われわれのテーマであり、売りですね。

――板前さんも社員だそうですね。

ええ、われわれの板前は社員だけです。職人を育成するのは時間がかかりますので、安定的な雇用をすることが絶対条件ですから。

(撮影:今井康一)

 

山川 清弘 東洋経済『株式ウイークリー』編集長兼「会社四季報オンライン」副編集長

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やまかわ きよひろ / Kiyohiro Yamakawa

1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て現職。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。

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