日本人でも世界で勝つプレゼン力は身につく 東京五輪を呼び寄せたプレゼンのプロが語る

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これは今回東京の(五輪招致)チームとも時間をかけて練習したことなのだが、笑顔は非常に大事だ。プレゼンをしているときにプレゼンターが楽しんでいるように見えると、聴衆にも楽しんでもらえる確率が高くなる。対して、資料に目を落としたままでカンペを読んでいるようなプレゼンだと、聴衆からの興味を引けないし、そもそも信頼を得られない。これもすべての文化に当てはまることだと思う。

パワポを読むのは最悪なプレゼン

――会議などの場では「パワーポイント」が使われることも多いですが、パワポをそのまま読んでいるというプレゼンも散見されます。

それは「Death by PowerPoint(パワーポイント死)」と呼ばれる失敗そのものだ。プレゼンをする場合、本来、プレゼンターは自分に注目してもらいたいはずだが、スライドにこれから話すことを書いてしまうと、聴衆はプレゼンターではなくスライドに注目をし、話を聞かずにスライドを読むようになってしまう。

パワポはあくまでビジュアルサポートとして使うべき。つまり、自分が話していることを視覚的にサポートするものを提供するべきだ。そのビジュアルも興味深くて、相手の興味を10~15秒程度ひけるものがいい。その後は、再び自分に注目してもらうようにしないといけない。

こういうプレゼンテーションの技というのが最近は非常に重要になっている。政治家に限ったことではない。スティーブ・ジョブズがいい例だ。たとえ製品発表会であっても、歩きながらパフォーマンスをするというのが今のトレンドなのだろう。

Nick Varley●東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会戦略コンサルタント。ロンドンを拠点とする国際スポーツ・コンサルタント企業Seven46の創業パートナー兼CEO。元英ガーディアン記者

――いろいろな方にプレゼンを指導してきたと思いますが、これまでで一番難しかったのは。

聴衆のプレゼンターに対する期待が高い場合は非常に難しい。たとえば、元サッカー選手のデビット・ベッカムのコンサルタントをしたことがあった。

彼くらいすばらしいサッカー選手でイケメン、セレブだと、聴衆はどういうわけか、彼はプレゼンターとしてもすばらしいと期待を高く持ってしまう。が、サッカーがうまくてイケメンということと、プレゼン力はまったく関係ない。

いろいろな方から依頼があるが、誰もがプレゼン力を改善したいという向上力を持っている。スキルさえ身に付ければ、いいコミュニケーターになれる。周りから、生まれつきコミュニケーション力が高い、プレゼンがうまい、と思われている人は、人生のどこかでコミュニケーションのトリックを発見して、そのスキルを身に付けているのではないだろうか。

(撮影:尾形文繁)

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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