「遊ぶように働く」を本当に実現した人の発想 学歴や職歴よりずっと大事なこと

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小宮山:すごく深い話ですね。そういえば私も、ハワイでトレッキングをしたときに同じような心境になって、それまでまったく興味がなくて、むしろ苦手だと思っていた山登りが好きになりました。

ピョートル:山も面白そうですね。ぼくはダイビングに限らず何をしていても、これってどういう意味なんだろう?と考えたり、自分の状況に置き換えてみたり、パターンを見極めたりして、何かしら学習しています。そこまで好奇心や学習意欲が強くなったのは、民主化前で共産主義国だったポーランドの田舎で生まれ育ったコンプレックスが原因だと思っています。

ぼくが生まれたのは、人間より犬が多くて、農家しかなくて、高校に行った人がいないような貧しい村でした。でも、ぼくが14歳のときに「ベルリンの壁」が崩壊して、民主化が進み始めたので、これからは知識が必要だろうと思って高校に進学したのです。

お金がなかったので、途中、ドイツへ出稼ぎに行ったこともありましたが、なんとか頑張って大学まで出た頃に、時代が動きはじめた。自分もその波に乗って前に進むために、何としても何かを学んで価値を生み出していかなきゃいけないと思い始めたんですね。

小宮山:私も複雑な家庭環境が原因で、小学校時代は問題児でした。でも、母に言われた「教育は機会を与えてくれる。学べば学ぶほど選択肢が増える」という言葉で勉強に目覚めたんです。高校までは受験勉強に必死でしたけど、大学時代からはバイトも旅行もすべてが学びだと思ってきたので、ムダな経験は1つもないですね。

優秀な人材に学歴は関係ない

ピョートル:ぼくも同じです。ただ、その学びの中で、必要なものとそうでないものを見分けないといけませんよね。おかしいと思うことがあれば、これはおかしいとちゃんと気づかなくちゃいけない。ぼくはよく「世界を止める」という言い方をしていて、5秒でも10秒でも間を置いて、「なぜ?」をいつも考えるようにしているんです。

「この人はなぜこんな話をしているんだろう」、「なぜ自分は今この仕事をしているんだろう?」と、一瞬立ち止まって「Why?」を考えると目的が明確になって、より自分らしい生き方に近づいていけます。ところが日本人は、「What」や「How」ばかり気にして、「何をどうすればいいのか?」だけを求める印象があります。

小宮山:確かに。

ピョートル:とくに、受け身のまま川に流されるように生きていると、「何をどうすればいいんだ?」と方法ばかり考えて苦しくなります。けれども、「なぜ?」を考えながら目的を確認して納得して生きていると、自分で楽しみながら川を泳げるようになる。人によっては、川から飛び出すこともできる。その違いですね。

Googleで当時、人事開発担当をしていたときに気がついたのですが、高いパフォーマンスを発揮する人の共通点は、人生でものすごく苦労したり、挫折した経験のある人でした。挫折を経験した人は必ずと言っていいほど、自分自身を見つめ直しますから。優秀な人材に学歴は関係ありませんね。

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