「SIMフリーiPhone」をアップルが解禁した事情 「廉価版iPhone」が2020年に登場のウワサも

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日本でもすでにApple Storeで1万円ほど端末価格を割り引き、これを分割払いにすることができる仕組みを提供しており、値段が高いiPhoneへの初期投資を抑えている。

さらに、Appleは環境問題への取り組みという文脈で、「Trade In」(下取り)プログラムを拡充している。これは日本向けにも提供されており、例えば2018年モデルのiPhone XS Max 512GBモデルで6万2060円、2017年モデルのiPhone X 512GBモデルで4万1440円の下取り割り引きを受けられる。

世界的に、通信会社と協力しながらiPhoneの市場を開拓してきたアップルだったが、iPhoneを含むスマートフォン市場の大きな減速で変化のときを迎えている。

その際に、Apple Storeでの施策が核となっており、日本ではSIMフリーiPhoneの販売を開始したアップル製品販売店の活用を進めていこうとしていることがわかる。販売状況や製品の注目度に合わせた施策をきめ細かく打ち出せるSIMフリーiPhoneの販売拡大は、アップルがより積極的に市場と対話していく武器となっていくのだ。

来年に控える「キラーモデル」のウワサ

SIMフリーiPhoneがより身近に手に入るようになり、アップルを中心とした販売施策による割り引きが拡充されるようになると、大手通信会社のユーザーだけでなく、MVNO、いわゆる格安SIMを利用している人にとってもiPhoneは身近な存在となる。

その一方で、格安SIM利用の動機は料金の安さであり、現在のiPhoneのラインナップにつけられた価格と釣り合わない。しかしその状況が2020年3月あたりに大きく変わる可能性がウワサされるようになった。廉価版iPhoneの存在である。

アップルは2016年3月、その当時最新モデルだったiPhone 6sのプロセッサーとカメラを、2013年モデルのiPhone 5sと同じボディーに備え、300ドル台の価格に設定した「iPhone SE」を発売した。このモデルは新興国向けの戦略モデルとなったが、先進国でも、価格の安さ、サイズの小ささから好評で、2018年9月までの2年半にわたって販売されてきた。

このiPhone SEが再び、2020年に登場するのではないか、と見られているのだ。

4年前を踏襲するのであれば、登場するであろう廉価モデルには、A13 Bionicチップ、1200万画素カメラといった2019年モデルのiPhoneの仕様を押さえながら、3年前、すなわち2017年モデルのiPhone 8のボディーを活用し、4.7インチディスプレーと防水、ワイヤレス充電に対応するスマートフォンという姿が浮かび上がる。

これがアメリカで349〜399ドル程度、日本では3万8000円〜4万4000円程度で販売されるようになると、価格が高い高級モデルというイメージが強いiPhoneの見方も変わってくるのではないだろうか。ここに下取り割り引きを利用することで、例えばiPhone 7なら1万5000円〜2万円の負担で最新モデルへ乗り換えられるようになる。

今回のSIMフリーiPhoneの販売拡大は、現状の打破とともに、来年の廉価版iPhoneに対する環境整備と見てもよいのではないだろうか。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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