歯を失う人が見落としがちな「根が折れる」事実 歯周病、虫歯ほどではないが警戒が必要だ

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一方で歯根の深い位置で真っ二つに割れていれば、ほとんどの場合は抜歯となります。

抜歯を避けるための治療法

しかし、破折の状況によっては歯科用接着剤で破折した部位を接着させ歯を保存する方法や、矯正治療を用いて歯を引っ張り上げて破折した部位を歯茎より上に出すことで極力歯を抜かない場合もあります。やり方は3つです。

1つ目は内側から接着剤で修復する方法です。口腔内接着法と呼ばれ、内側だけのヒビに限られた初期の破折に対して行われます。ヒビの部分を削り、強力な接着剤で修復します。

2つ目は1度抜いて接着剤でくっつけて戻す方法です。真っ二つに割れている場合で歯がもろく弱っていない場合に使われます。口腔外接着再植法と呼ばれ、1度歯を抜いて強力な接着剤で接着し、抜いた歯をまた元に戻して固定する治療が行われる場合があります。

最後はヒビの下縁まで矯正力で歯を引っ張り上げる方法です。ヒビの位置が比較的浅い場合、エクストルージョンと呼ばれる手法で歯を矯正力で引っ張り出してヒビのラインを歯茎の上まで出し、ヒビを取り除いた後、かぶせ物をします。これにより感染を防ぐことができます。

歯根破折はどのようにして予防したらよいでしょうか。いくつか挙げておきます。

歯ぎしり・食いしばり対策
・日中に食いしばる癖がある場合はやめる
・スポーツなどで食いしばってしまう場合にはスポーツ用マウスピースを着用する
・夜間の歯ぎしりにはナイトガード(マウスピース)を着用する
・ボトックス注射で咬筋を緩める
虫歯予防
・神経を抜くことにならぬよう、虫歯がひどくなる前に歯医者に行く
・定期検診を受け、虫歯予防に努める
食事中の注意
・硬いものをガリガリ噛むことは極力控える
・神経を抜いた歯、インプラントの部分では力を入れすぎない
神経を取った後の治療
・硬い金属の土台を避ける
・かぶせて治す

歯はもともと丈夫なものですが、過剰な力がかかりすぎるとやはり壊れてしまうものです。歯の破折は中年以降から徐々に増えてきます。それまでの力の蓄積が発現してくるのでしょう。「自分の歯は丈夫だから」と過信して毎日硬いものを噛む習慣がある人は要注意です。歯に力がかかっている自覚のある人は歯科医師と相談し、予防対策をしましょう。

小林 保行 歯科医師/キーデンタルクリニック院長

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こばやし やすゆき / Yasuyuki Kobayashi

2004年東京歯科大学歯学部卒業、表参道の総合歯科医院に勤務。2006年市谷の歯科医院にて副院長として勤務。2008年に赤坂見附駅から徒歩1分の場所にキーデンタルクリニックを開院しました。開院以来、「確かな技術で納得の治療を」モットーに、あごや歯の場所を細かく分析をし、歯だけでなく口回りを総合的に診断。現在はムシバラボというサイトを立ち上げ、歯や口周りの情報を発信。主な資格はDHA岩田セミナー認定医、総合治療セミナー「一の会」認定医、クリアアライナー矯正認定医、日本顎咬合学会所属、日本インプラント学会所属、消防庁認定、救命技能講師修了。

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