「日本の鉄道の姿を変える」三セク社長の抱く夢 「今、ローカル線には追い風が吹いている」

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――都会にいる人間の机上の計算だけではわからないことがたくさんあるのですね。

今の鉄道は、新幹線に乗らないとどこにも行けない。でも、それでいいはずがない。新潟の小学生に鉄道に乗ってもらって、長野まで遠足に行かせてあげたい。長野の小学生に鉄道に乗ってもらって直江津の水族館に遠足に来てほしい。海を見に来てほしい。遠足のお弁当をバスの中で食べるより、電車の中で食べるほうが楽しいじゃないですか。その楽しさを伝えてあげたい。

そのためには他社との連携が必要です。幸い、どの会社さんにも理解していただいています。電気方式の接続が難しいのであれば、客車列車を動かしてもいい。機関車はJR貨物さんにお願いして動かしてもらい、貨物列車の後ろに客車を連結してくれてもいい。

――貨物列車に客車を連結する、現代の混合列車ですね(笑)。

客車列車であれば新製費用も安いですよ。新潟と長野と富山と石川で、1県が1両だけ作れば4両編成が出来上がる。それぞれの客車でそれぞれのお国柄を紹介してくれれば楽しい。観光のオフシーズンには北海道や九州に貸し出してもいい。そういう取り回しができるのが客車列車だし、鉄道のすばらしさ、楽しさだと思います。

北陸発、青森行きの客車列車を運転して、食堂車も連結する。親子でカレーライスが食べられる。この列車は、復路は夜行列車として運転する。

直江津の扇形庫も活用したい

――もし運行できれば、満員になる気がします。

直江津駅に残るターンテーブルと扇形機関庫(写真:鳥塚亮)

これはもちろん、私の夢です。具体的な計画があるわけではありません。夢といえばもう1つ。直江津駅にはターンテーブルと扇形庫(せんけいこ)が残っているのです。これも有効活用してみたい。

もし、全国で「もう捨てるしかない」と思われている静態保存の蒸気機関車があるのなら、それを譲ってほしいですね。扇形庫に機関車を3両くらい並べてみたら、また何か新しい計画を思い浮かべることができるかもしれません。

鳥塚氏の夢の計画は終わることなくまだまだ続きそうな気配だが、そのうちのいくつかは実現の可能性が高いように感じられた。私たちは、これからのえちごトキめき鉄道に大いに注目していこう。1つのビジネスモデルが出来上がれば、そこから日本の鉄道の姿が変わってゆく。
池口 英司 鉄道ライター、カメラマン

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いけぐち・えいじ / Eiji Ikeguchi

1956年東京都生まれ。日本大学藝術学部写真学科卒業後、出版社勤務を経て独立。著書に『国鉄のスピード史―スピードアップがもたらした未来への足跡』(イカロス出版)、『鉄道時計ものがたり―いつの時代も鉄道員の“相棒”』(共著、交通新聞社新書)、『JR旅客6社徹底比較』(河出書房新社)、『さらに残念な鉄道車両たち』(イカロス出版)等。

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