「日本の鉄道の姿を変える」三セク社長の抱く夢 「今、ローカル線には追い風が吹いている」

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――おそらくは、鉄道会社などとは比較にならないほど「営業係数が悪い」自治体もあることでしょうね。あらゆる公共事業は、赤字でなければならないという考え方もあるかと思いますが。

私はそこまでは考えません。黒字を出すべきである。ただし、計上された黒字は、事業者の他の非採算部門の補填に使うなどの、公共性が反映された用途に用いるべきであると考えます。

新しい仕組みを作らなければ

――鳥塚さんは、これまでにいすみ鉄道の「ムーミン列車」など、鉄道好きにとっても楽しい企画をいくつも実現してきました。まだ先のことになるでしょうが、そのような企画は何か検討していますか?

地方ローカル線には、いま追い風が吹いています。小泉政権の時代にも全国のローカル線が次々に消えてゆきました。けれどもそれから10年が経って、国民の誰もがローカル線の価値を認めるようになった。

昔は、ローカル線に観光列車を動かすなどもってのほかという風潮がありましたが、今は何の不思議もない。活性化のために観光列車を動かそうという案が通る時代になったのです。ですから、今の時代に新しい仕組みを作らなければならないと考えています。

筒石駅の駅舎。ホームは地下のトンネル内にある(写真:K,Kara/PIXTA)

幸いなことに、えちごトキめき鉄道ではすでに「えちごトキめきリゾート雪月花」という観光列車が運転されていて、好評をいただいています。今度はこの列車を生かして、沿線にたくさんある酒蔵を巡るようなツアーがあれば、楽しいでしょうね。

当社には筒石という駅があります。この駅は地下駅でホームは10両分の長さがあるのですが、現在動いている列車は単行なので、9両分のスペースが余っています。

――そのスペースを何に使います?

酒の貯蔵庫。駅で蔵出しのお酒を楽しめます(笑)。

実はえちごトキめき鉄道では、開業5年目となる2020年3月に運賃の値上げを予定しています。それではその見返りとしてお客様に何を提供するのか? これもまだ検討段階ではあるのですが、高田駅と直江津駅のホームに、高校生向けの自習室を作ろうと考えています。これは当然、冷暖房完備となります。

それから、自転車を積むことができる「サイクル列車」も運転してみたい。これは駅の構造との兼ね合いもありますので、まだ運転を確約することはできません。

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