視野に入った、2013年度経常赤字転落

日本経済の空洞化などで圧力増大も

2月20日、1月貿易統計で赤字が初めて2兆円台を突破。経常収支についても2013年度に初めて赤字に転落する可能性も否定できなくなってきた。写真は都内のコンテナ港で撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 20日 ロイター] -1月貿易統計で赤字が初めて2兆円台を突破し、2、3月も駆け込み需要による輸入増加で赤字幅はさらに膨らみかねない。経常収支についても2013年度に初めて赤字に転落する可能性も否定できなくなってきた。

4月以降は内需減速で輸入が減り、貿易赤字はいったん縮小すると予想されるが、エネルギー輸入の高止まりと、空洞化・高齢化により、輸出力低下と輸入増加傾向は止まらず、貿易赤字が定着するとの見方が支配的だ。経常収支も14年度は黒字に戻るとしても従来のような10兆円台への回復は難しく、近い将来に赤字傾向に転じる流れが出来つつあるとの見方が浮上している。

年度末まで続く巨額貿易赤字、輸入増と弱い輸出

2月、3月の貿易赤字については、駆け込み需要による輸入増という要因に加え、アジア諸国の春節に伴う輸出停滞の要因もあり、経済の実態以上に赤字が膨張する可能性がある。

このため、エコノミストの間では、足元の巨額貿易赤字は3月までがピークで「14年度に入ると駆け込み要因のはく落で、輸入の増勢は一服が見込まれる」(三菱UFJモルガンスタンレー証券・シニア・マーケットエコノミスト・戸内修自氏)という見通しが多い。

とは言え「短期的には貿易収支黒字化のハードルは、非常に高い」(大和総研・チーフエコノミスト、熊谷亮丸氏)というのが、ほぼコンセンサスとなっている。

輸入サイドで駆け込み需要分がはく落しても、稼動する原発がゼロである以上、LNGなど燃料輸入は高止まる。

輸出サイドも東南アジア諸国連合(ASEAN)や中国向けの回復は今のところ見えていない。1月の実質輸出(内閣府試算)でみても、アジア向けと欧州向けはそれぞれは前月比3%超の落ち込みだ。米国向け輸出が同7%以上伸びても支え切れず、全体でも減少した。

大和総研によれば、13年の貿易収支赤字11.5兆円のうち、4兆円が原発停止に伴う輸入増が影響し、7兆円が空洞化によると試算。空洞化要因については、政策当局関係者が「1年程度円安が継続したからといって、そう簡単に国内回帰するとはみていない」との見解を示している。

年度初の経常赤字の可能性否定できず

巨額貿易赤字は経常収支の足を大きく引っ張っている。すでに13年度は4─12月の累計で経常黒字が1.7兆円に過ぎず、大震災前の同時期の2割にも届かない。

13年度の経常収支の見通しについて、ニッセイ基礎研究所の経済調査室長・斎藤太郎氏は、黒字が維持できるか微妙だとして「最近は貿易統計の下振れが続いているので、2月、3月も下振れるようだと年度ベースで赤字もありえる」としている。もし、赤字に転落すれば、比較可能な1985年度以降の統計において、初めて年度ベースでの赤字を記録することになる。

14年度に入れば、輸入の減少で貿易赤字が縮小するので、経常収支が黒字化し、その幅も拡大するという見方が多いものの、同氏は「それでも従来のような10兆円台の黒字にはほど遠い」との見通しを示した。

近い将来の経常赤字傾向も視野に

貿易構造はすでに大きく変わっており、貿易赤字は完全に定着した。ただ、内需好調で輸入が増加する赤字であれば、「悪い現象」と決めつけることはできない。問題は駆け込み需要が終わっても、中長期的に貿易赤字が日本に定着し、「悪い貿易赤字」の現象が継続しそうなことだ。

クレディスイス証券・チーフエコノミスト、白川浩道氏は「15年以降については、高齢化・空洞化の進展による輸入数量のすう勢的増加と交易条件悪化傾向を背景に、経常黒字が構造的に縮小を続ける」とみている。稼ぐ力が落ちる一方で、医薬品の輸入額など増え続ける。

経常収支については、当面、海外からの利益送金を中心に所得収支の黒字が拡大し、貿易赤字を埋められると予想されている。

だが、人口動態面から考えれば「中長期的にも経常黒字が縮小から赤字に向かう時期は、それほど遠くないと考えるが自然」(斎藤氏)との指摘も出ている。

大方の市場関係者が予想している時期よりも前に、経常収支の赤字化が到来する可能性が高まっていると言えそうだ。

(中川泉 編集:田巻一彦)

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