メルカリはアントラーズと何を企んでいるのか 親会社の社長が突然子会社の社長になった訳

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「メルカリとしてのビジョンと同じところがあるのですが、やはり、もっと世界に出ていきたい。ヨーロッパの一流チームと対等に戦えるチームを作っていきたい。アントラーズには「事業規模100億円」という目標数値もありますが、まずはきっちりとビジネスを回していくというところが大事だと思っています。

今でも非常にうまくいっているので、何かを変えるというより、基本的に僕たちビジネスサイドがいろいろな面でのサポートをすることで、アドオンしていくというイメージです」

あくまで、これまであったチームはそのままに、クラブの基盤をさらに大きく広げていくことで、世界への進出を目指すということだ。

25年の成功は「道半ば」、目指すは「圧倒的な存在」

鹿島アントラーズは、「2人の鈴木」が中心となって、ここまで引っ張ってきた。偉大なるアイデアマンとして事業面を支えてきたのが鈴木秀樹なら、プロフットボールチームとしての運営を支えてきたのが、常務取締役強化部長の鈴木満だ。

「なんか、いまだに怒られているような感覚になるんですよね」

鈴木満は、笑みを浮かべながら、こういう。今でもジーコのポスターやフィギュアが自分の近くにあれば、見られているようで、そっとどけてしまうのだという。

彼は、ジーコの最も近くでアントラーズを作り上げてきた。ジーコが住友金属工業蹴球団に加入してからというもの、“プロとはなんたるか”を徹底的に叩き込まれた。毎日、何でもかんでも一方的に怒られた。説教はピッチ内だけでなく、ピッチ外にも及んだ。なんでゴールネットが白じゃないんだ。試合後の食事がうどんって罰ゲームなのか。いつもつねに問い詰められる。

それでも何とかついていった。本気のジーコに、本気でついていった。その積み重ねが、すべては勝利のために進むクラブの空気を醸成した。

新体制のトップになる小泉社長は、変わらないものとして強化を挙げた。これまで通算20個のタイトルを獲得し、2位ガンバ大阪の9個と大きく差をつけている。しかし、ジーコをはじめとした強化部門のスタッフは、現状に全然満足していない。さらなる向上と変化を求めている。クラブ創設から強化に携わり、強化部長として20冠を成し遂げてきた鈴木満は言う。

「やっぱり圧倒的に勝ちたいし、圧倒的な人気チームになりたい。そのためにも、これから変わらなくてはいけないという思いが強くあります。この25年やってきたことが、ある程度の成功としていわれますが、それがすべてではないと思っています」

変わらず継続とされたチームを率いる鈴木満だが、さらなる拡大を狙う。それは、世界の強豪と伍して戦うチーム作りだ。

「2016年にJリーグで優勝して、クラブワールドカップに出場しました。そこでレアル・マドリードと戦いました。それ以降もAFCチャンピオンズリーグ(ACL)に出場し続けているし、2018年はACLで初めて優勝して、アジアの代表としてクラブワールドカップを戦った。惨敗という結果でしたが、あの舞台を経験すると、また同じ舞台で戦いたいという気持ちが強くなります」

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