メルカリはアントラーズと何を企んでいるのか 親会社の社長が突然子会社の社長になった訳

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「寝耳に水だったのは、新日鐵との経営統合です。新日鐵になったことで住友金属ではなくなり、アントラーズとの距離感や温度も変わってきました。これまで近しい関係でやってきたものが、組織が巨大になったことで、アントラーズが勝っても、あまり喜んでもらえてないのではないかという思いが出てきたのです」

親会社との距離を感じるようになった。ただ、それだけで今回の結論に至ったわけではない。新日鐵としても、400社ある子会社の中で唯一特殊なスポーツクラブだったアントラーズに対して、今後よりよいサポートをすることが難しいのではないかという考えが生まれた。

「住金という名前が消えて、日本製鉄になりました。そこで、“素材メーカーがプロスポーツクラブを支えていくことに限界があるのではないか”という判断が生まれた。僕は、彼ら経営者の判断は、極めて正しいと思っています。背景としては、そういった見解があったからこそ、譲渡という作業に踏み切ったんだと思います」と鈴木は言う。

皆がFootballで「新たな夢」を見るステージへ 

今年、鹿島アントラーズはNTTドコモと通信カテゴリーのオフィシャルスポンサー契約を結んだ。今後、5G(第5世代移動通信システム)でネットワークがつながると、提供できるサービスが広がり、おそらくテクノロジーで解決できる地域課題が増えていく。渋滞解消のための自動運転システムの開発、イノベーションによる高齢者に優しい社会作り、ハイテクタウンの構築……。こうした壮大な構想を念頭に置いてのものだ。

「これからが楽しみでしょうがない。60歳を過ぎて、これだけ楽しいことができるのは幸せですよ」

2018年の鮮やかなAFC優勝も糧としつつ、鹿島アントラーズは「最高峰のステージの常連」を目指す(写真:©️KASHIMA ANTLERS)

Jリーグ開幕をきっかけにスポーツのとりこになった小泉社長を先頭に、これまでクラブを築き上げてきた2人の鈴木も、変わらずクラブを牽引していく。結果を残し続けている強化のフィロソフィーは変えず、事業面で拡大していくことで、チームとしての基盤をより大きくしていくつもりだ。

アントラーズには、創設当初に掲げた永遠のスローガンがある。

「Football Dream 同じ夢を見よう」

小泉社長は今後のビジョンについて次のように語った。

「サッカービジネスにおいても当然リスクはあるわけですが、変化は必ずチャンスをもたらすと確信しています。アントラーズが掲げる“Football Dream”の実現に向けて、変革をリードし、世界を代表するクラブを作っていきたいと考えています」

新たな夢への挑戦が始まった。

池田 博一 ライター、編集者

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いけだ ひろかず / Hirokazu Ikeda

1983年、埼玉県生まれ神奈川県育ち。明治学院大学卒業後、日刊スポーツ新聞契約社員を経て、アドバンス クリエイトへ入社。現在は文藝春秋社の「Number」Webなどでも連載コラムを執筆するなど、幅広く活躍。

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