今の鋼材原料の高騰は自助努力だけで補えない−−馬田 一・日本鉄鋼連盟会長

今の鋼材原料の高騰は自助努力だけで補えない−−馬田 一・日本鉄鋼連盟会長

日本の鉄鋼大手と資源メジャーの鉄鉱石価格交渉が一部決着した。その値上がり額は過去最大。空前の好業績に沸いてきた鉄鋼業界も、原料価格高騰で踊り場を迎えている。
(週刊東洋経済3月1日号より)

ヴァーレ(ブラジル)との交渉で、2008年度の鉄鉱石価格は前期比65%アップで決まりました。

 鉄鋼需要が非常に強い中、原料の需給も極めてタイトな状況が続いている。鉄鉱石のスポット価格は昨年末で1トン当たり150ドルと、長期契約の3倍近い価格まで上がった。08年度の鉄鋼需要は07年度からさらに6%程度増える見込みで、どう考えても需給は厳しくなる。07年度は1トン当たり50ドル弱だった鉄鉱石価格が65%の値上げで80ドル弱。大きな値上がり幅だが、われわれはユーザーに安定して鋼材を供給する責任がある。残念ながら受け入れた。

大幅値上げにしては、昨年12月の交渉から決着までが早かった印象もあります。

 スポット価格が高い中で交渉妥結が4月を越すと、必要量を確保できなくなる。過去を見ても、大体このくらいの時期には決まっている。値段を決めるタイミングとしては早くも遅くもない。

原料高騰で製品価格への転嫁は避けられないのでしょうか。

 原料の値上がりによるコストアップは、02年から07年までに業界全体で3兆6000億円。昨年1年間で9000億円から1兆円程度。リオ・ティントやBHPビリトンとも65%アップで決まったとすれば、鉄鉱石だけで5000億円程度のコスト増になる。そのほかの原料はこれからの交渉になるので具体的な数字を挙げられないが、同様に需給はタイトな状況。(コスト削減で)努力できる部分はこれまでやってきたし、今後も続ける。だが、努力だけでとても補えるものではない。

自動車業界からは価格転嫁を牽制するコメントも聞かれます。

 原料価格動向のほかに、もう一つの問題がある。世界の鋼材市場の中で、日本の鋼材価格が低いレベルにある点だ。鋼材販売は通常の市場取引による「店売り」と、特定ユーザーとの大口契約に基づく「ひも付き」という二つの契約形態がある。どちらかといえば「ひも付き」は付加価値が高い製品で、品質管理も厳しくやっている。ところが、直近2~3年の現象として、「店売り」より「ひも付き」のほうが安い状態が続いている。われわれが設備投資やさまざまな研究をして作る製品の価値が、ユーザーに十分認められていない。そうした事情への理解を求めていく。

リオ・ティントは65%の値上げでは不服だと表明していますが。

 リオ・ティントもBHPもこれからの交渉だ。(各社とも同率の値上げが続いてきたという)長い交渉の歴史からすれば、65%は守ってもらう。不服と言われても簡単に変えることはない。
(週刊東洋経済:猪澤顕明 撮影:尾形文繁)

ばだ・はじめ
1948年生まれ。73年東京大学大学院工学系研究科修了、旧川崎製鉄入社。鉄鋼企画部長を経て2003年JFEスチール専務執行役員就任。05年同社社長。06年から日本鉄鋼連盟会長。

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