災害復旧作業に潜む「意外な健康リスク」の正体 軽装での災害ボランティアはお勧めできない

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――破傷風にはワクチンがあります。

1968年以降に生まれた日本人には定期接種が行われています。しかし、それ以前は自治体により差があります。まったく接種していない人も多いとみられ、破傷風のリスクについて知らない人もいると考えられます。このため、若い人よりも現在52歳以上の中高年のほうがリスクが高い。

また、子どもの時に接種していたとしてもほぼ10年で効果が切れますので、若い人でも災害ボランティアに行く前に追加で接種しておいてほしい。

「たかが風邪」とあなどってはいけない

――それ以外に注意すべきことはありますか。

土壌中の細菌には地域性もあるので今回の被災地と同じかどうかはっきりわかりませんが、霧状になった水から呼吸器感染するレジオネラ菌やフィリピンなどで洪水後に多い経皮・経口感染するレプストラ菌があります。ただ、国内での感染例はそれほど多くありません。

それよりも、東日本大震災や最近の豪雨災害などでいちばん多いのが単純な風邪です。たかが風邪とあなどってはいけない。避難所生活が長期化すればストレスがたまって体も弱りますから、こじらせて肺炎を起こす高齢者が多いという調査結果が出ています。

今年はインフルエンザの流行がすでに始まっていますし、風疹や麻疹の流行も終わっていません。集団生活ではノロやロタといった消化器系の感染症も多くなります。

予防するには、無理をしないこと、マスクをするなど咳エチケットを守る、手をしっかり洗うといった基本的な衛生管理が必要です。また、被災者自身の手では難しいことかもしれませんが、栄養バランスのいい食事も大切です。ボランティアに行く人も同じです。ケガをしたら傷口を良く洗って消毒することにも気を配ってほしいですね。

小長 洋子 東洋経済 記者

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こなが ようこ / Yoko Konaga

バイオベンチャー・製薬担当。再生医療、受動喫煙問題にも関心。「バイオベンチャー列伝」シリーズ(週刊東洋経済eビジネス新書No.112、139、171、212)執筆。

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