シニア起業で年金支給70歳時代を生き抜く 定年後に会社を興した2人のシニアの事例
今、団塊の世代に、起業ブームが起きている。たとえば、東京都中小企業振興公社が主催する「TOKYO起業塾」では年1回、シニアコースを開催している。応募者は「この3~4年で倍に増えている。定員を増やして対応している」(新事業創出課の鈴木哲也・起業支援担当係長)という活況ぶりだ。
「団塊の世代は会社をリタイヤしても、社会はリタイヤしたくない人たち。今までの経験を生かして、積極的に起業し始めている」(博報堂・新しい大人文化研究所の阪本節郎所長)
都内でIT系の人材仲介業を行う「IPOテクノ」の加瀬滋さん(65)も、そのうちの1人。POSシステムやATM(現金自動預払機)などを製造する日本NCRで工場の生産管理などを行ってきたが、米国のコンピュータ会社DECが日本に進出した時に同社へ転職。その後、IT企業でソフトウエアの受託開発などに携わり、2008年5月に60歳で定年退職した。
だが、定年後も加瀬さんの元には、「ソフトウエアのエンジニアを紹介してくれないか」という相談がたびたび寄せられていた。そこで一念発起。退職から半年後の同年11月、会社を興し、事業として運営していこうと決めた。現在、同社には40~50代を中心とした15人弱の契約社員がおり、仕事内容によって最適な人材を顧客先に派遣している。
IT業界では、エンジニアは若くないと技術革新のスピードについていけないとされている。だが、IPOテクノが扱うのは、主にCOBOLという古いプログラミング言語の案件。金融機関の汎用コンピュータではいまだに使われているが、若いエンジニアで習得している人は少ない。そのため、同社に所属するベテランエンジニアに活躍のチャンスがあるのだ。
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