誠品書店は「日本が学ぶべき店」と断言する理由 単なる「オシャレな書店」や「雑貨屋」じゃない

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一例として、茶籽堂という台湾のスキンケアブランドがあります。1992年に創業、台湾独自の茶の実を使った洗剤から出発した企業ですが、現在は2代目・趙文豪社長が事業を継承、2004年からは新たなスキンケア商品を作り出し、同社は高いブランド価値をもつようになっています。

「価値のあるものを売れるようにしていく」という創造性

特筆されるのは、同社が地域再生や安定的な農村経営などにも積極的に関与し、現在宜蘭地域の農村で耕作放棄地を借り上げて、独自の椿油生産にも乗り出している点です。

実は、私も先日、現地を訪問してきましたが、地域コミュニティーとの協業を極めて重要視しており、それを2030年に向けた企業ブランディングの礎にしていこうとしています。

誠品グループは、このように、地域再生にも寄与する「メイドイン台湾」メーカーを、資金面や積極的な出店機会提供などを通じて、積極的に成長させる役割を果たしています。

ひるがえって日本では、残念ながら、その時々はやっているベストセラーの本や商品しか置いていない店が大半です。育てるのではなく、刈り取るのが商業という視点で地域の商業施設の多くがテナントを入れてしまっているがゆえに、どこの地域にいっても金太郎飴のように同じような店しか入っていない商業施設ばかりになっています。

しかし、誠品グループは「売れているものを売る」のではなく、「価値のあるものを売れるようにしていく」という創造的な商業を行っているわけです。その育成に必要な資金なども拠出するインキュベーション(孵化させる)的な方法論などについて、日本も学ぶべきことが多いはずです。

木下 斉 まちビジネス事業家

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きのした ひとし / Hitoshi Kinoshita

1982年東京生まれ。1998年早稲田大学高等学院入学、在学中の2000年に全国商店街合同出資会社の社長就任。2005年早稲田大学政治経済学部政治学科卒業の後、一橋大学大学院商学研究科修士課程へ進学、在学中に経済産業研究所、東京財団などで地域政策系の調査研究業務に従事。2008年より熊本城東マネジメント株式会社を皮切りに、全国各地でまち会社へ投資、設立支援を行ってきた。2009年、全国のまち会社による事業連携・政策立案組織である一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンスを設立、代表理事就任。内閣官房地域活性化伝道師や各種政府委員も務める。主な著書に『稼ぐまちが地方を変える』(NHK新書)、『まちづくりの「経営力」養成講座』(学陽書房)、『まちづくり:デッドライン』(日経BP)、『地方創生大全』(東洋経済新報社)がある。毎週火曜配信のメルマガ「エリア・イノベーション・レビュー」、2003年から続くブログ「経営からの地域再生・都市再生」もある。

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