流行の「骨盤矯正」を医師が危ういと感じる根拠 「骨盤の歪み」は整体・カイロでは治せない?

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しかし、仙腸関節のずれを治すのは、医師であっても容易ではない。現在、医学的に最も認められている仙腸関節の治療法に、「AKAー博田法(エーケーエー・はかたほう)」という手法があるが、その習得には長い時間がかかるという。

骨盤部分にある仙腸関節こそ、慢性腰痛を引き起こす主因とされる(写真:yodiyim/ PIXTA)

日本AKA医学会の理事長も務める前出の片田氏は話す。「AKAー博田法は、指先だけの感触で、仙腸関節がどのようにひっかかりを起こしているかを見極める高度な技法。体が緊張して反射を起こさないように注意しながら、指先をそっと動かして、ミリ単位の仙腸関節のずれを正す。これには医師であっても5年ぐらいの修練が必要で、できる医師も多くない」。

このような手わざ技術に比べれば、ちまたの骨盤矯正の施術は無資格者のマッサージと大差がない、と片田氏は指摘する。

単なるマッサージでも症状が和らぐことはある。だが問題は、生半可な施術ではかえって健康を害してしまう可能性があることだ。

高額な回数券販売で消費者トラブルも

国民生活センターには、骨盤矯正施術に関連する健康被害の相談が今年に入って複数件届いている。そのうちの1つ、4月に報告があった40代女性の事例は、肩こり治療のために訪れた接骨院で骨盤矯正を勧められて受けたところ、股関節の痛みが逆にひどくなり、病院で剥離骨折と診断された。女性は返金を求めたが、「因果関係が不明」という理由で接骨院側から拒まれているという。

骨盤矯正の高額回数券販売に関連する消費者トラブルも相次ぐ。今年には、腰痛治療のため接骨院に骨盤矯正を受けに行った際、64回分もの回数券を30万円で購入させられたという主婦や、途中でキャンセルできるという説明を受けて10回分3万円の回数券を購入したが、実際にはキャンセルができなかったという主婦から、返金の相談が同センターに届いている。

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