スカイライナー、在来線最速支える「プロ意識」 最高時速160km、線路や信号などに総力を結集

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ここまで話を聞いて思った。車両、ディスクブレーキ、レール、分岐器、信号、架線……在来線最速の時速160kmを可能とさせている要素は数多くあるが、この高速運転を可能にするための、国内初や数少ない技術を日々支えているのは、いま目の前に座っているプロフェッショナルたちである。その高い矜持(きょうじ)はいったいどこに起因しているのであろう。

それは世界の玄関・成田空港から日本の首都・東京に入るためのいちばん速い乗り物こそがスカイライナーである、という自負に尽きるのではないだろうか。

思えば京成電鉄の歴史は、成田空港アクセスの歴史であったという。京成電鉄110年の歴史の中、その3分の1強を占める40年もの間、空港輸送のための鉄道乗り入れをし、空港直下の駅を造り、さらに成田スカイアクセス線という新線も造った。

そして巨大なインバウンドが予想されるオリンピックを目前に、スカイライナーの20分間隔運転を発表した。現在の成田スカイアクセス線の地上整備すべての総力を挙げ、この間隔を実現したという。

発車メロディーに込められた意味

高速運転とは話が離れてしまうが、東京藝術大学と連携した旧博物館動物園駅を取材させてもらった筆者としては、もう1つ聞いてみたい話があった。それは京成上野駅で使われているスカイライナー専用の発車メロディーが、東京藝術大学音楽環境創造科の西岡教授(2018年当時)監修のもとに作られた曲だというのだ。

西岡教授の授業で、学生たちが課題として、京成上野駅の発車メロディーを作曲してくれたそうだが、その中でもスカイライナー専用に選ばれたメロディーのイメージを聞いてみた。

スカイライナーは上野という歴史の町にありながらも、現代を象徴する電車である。そこで日本の伝統楽器・笙の和音をベースに、現代の楽器であるシンセサイザーの音色を取り入れて作曲したそうだ。さらに表現したかったのはスカイライナーならではのスピード感、そして上野から海外へ出かけて行く人、帰って行く人たちに「いってらっしゃい」という気持ちを込めたともいう。

この40年間、全力で世界の人々の「いってらっしゃい」「おかえりなさい」を見守り続けたスカイライナー。今スカイライナーは2020年東京オリンピックを目前に、今まで培ってきたすべての力を集結し、成田空港東京間最速アクセス、そして20分間隔運行という、最も高いパフォーマンスの実現をかなえようとしている。

さとう ようこ ライター、宣伝プランナー

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Yoko Sato

美術大学卒業後、クルマ会社のハウスエージェンシーにて広告宣伝・販売促進のクリエイティブディレクターを務める。転職した広告代理店に勤務していたときに担当していたゲーム会社から受託し、シナリオライターに。その後、顧問として家庭用ゲームソフトの広告ディレクターおよびコピーライターとなる。現在はゲーム会社出身のママ友に誘われ、エンターテインメント系デザインプロダクションにライター&プランナーとして参加している。

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