スカイライナー、在来線最速支える「プロ意識」 最高時速160km、線路や信号などに総力を結集

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初代のAE形のデザインはクールだと感じていたが、山本寛斎氏の手による2代目AE形のデザインも先頭車両のシャープなラインが美しく、在来線最速にふさわしいものになっている。この「風」と「凛」をイメージしたという車両には、どのような工夫が凝らされているのだろうか。

まずは時速160kmを実現するために、通勤車両に使われている鋼やステンレスよりも軽いアルミニウム合金を採用し軽量化を図っているという。ただ速さの秘密はそれだけではない。「もちろんスピードを出すのも重要ですが、高速走行を安全に支えるために、ブレーキが大事な役割を果たしているのです」と計画課の吉原氏は言う。

通常の通勤車両に使われているのは、車輪がレールと接する踏面に鋳鉄や合成樹脂、合金などでできた制輪子を押しつけ、摩擦で減速させる制動方式の踏面ブレーキである。一方、AE形は高速走行からも安定したブレーキ力を確保するため、車輪や車軸に装着したブレーキディスクをキャリパー装置で挟み込むディスクブレーキを採用している。

AE形だけに搭載されている特別なディスクブレーキだけに、なにか特別なご苦労もあるのではないか。「実は最初キャリパー装置をメンテナンスする場所がなくて困ったのです。そこでキャリパー装置だけを整備する専用のメンテナンススペースを作りました」と教えてくれた。ひとつの装置だけを整備する専用の場所とは、なんとぜいたくなことであろうか。

「耳ツン」を防ぐための工夫

そして時速160kmが出てしまうがゆえに起きてしまう問題も、車両の工夫によって解決しているそうだ。それは、トンネル内に入ったときに耳の内圧がキーンとなる状態、通称「耳ツン」である。

AE形が走っている成田スカイアクセス線は山間部が多い。よってトンネルも多い。時速100km程度ではトンネルに入っても耳ツンは起こりにくいが、AE形が時速160kmでトンネルに突入すると、客室内外の圧力変動により普通の車両構造では耳ツンが起きてしまう。

そこで客室内の気圧の変化を最小限にくい止めるため、乗降扉を複数のシリンダーで抑え気密性をアップするなどし、外の気圧の影響を極力受けないように工夫をしているという。

さらに、都内に入ってからは郊外とは違った問題点も解決しないといけない。郊外を抜け都内に入ると急に増えるのがカーブである。とくに上野と日暮里の急カーブを安全に運行しなければならない。直線部の速さとカーブ、異なるテーマのどちらにも対応するために、高速走行を重視したボルスタレス台車と蛇行を抑制するヨーダンパを採用しているそうだ。

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