逆走シーサイドライン、自動運転「再開」で安心? 衝突事故から3カ月、予想よりも早かった復旧

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事故車両は、2本の配線のうちF線が断線していた。運転記録装置のデータでは、事故発生の1往復前(新杉田発金沢八景行き)の運行中に電圧がかからなくなっていたといい、この時点で断線したとみられる。新杉田駅を発車する列車は、本来ならF線に電圧がかかり、R線は無加圧の状態となるが、断線によってF線・R線ともに電圧がかからない状態となり、それまでの進行方向を維持したまま走り出して衝突した。

逆走衝突事故を起こした車両(記者撮影)

シーサイドラインは再発防止対策として、F線・R線のどちらも電圧がかからない状態となった場合は列車が動き出さないようシステムを変更するとともに、両線に電圧がかかっているかどうかを確認するための「検知リレー」を新たに設置。断線などで電圧がかかっていなければ、出発の指示を出す地上側のシステムに「正常」の信号を送れないようにした。

また、F線・R線に電圧がかかっていない場合は加速の指示が出ないようにし、ATC(自動列車制御装置)によって非常ブレーキがかかる仕組みも導入。これまでF線・R線とは別系統だった、地上側のシステムが車両の進行方向を確認するための回路も、実際にモーターの進行方向を制御するF線・R線の情報を使う形に変更した。

さらに、今回の事故とは関係ないものの、調査によって逆走を引き起こす可能性があるとされた、停車位置を行きすぎた場合に車両をバックさせて微調整するための装置も撤去した。

対策の有効性は認められたが…

国交省はシーサイドラインを含む、無人自動運転の鉄道・軌道7社局などによる事故防止の検討会を6月中旬以降3回開催。シーサイドライン側が示した再発防止対策について、鉄道総合技術研究所(鉄道総研)による調査などを経て有効と判断し、7月19日に「中間とりまとめ」を公表。自動運転の再開に向けた技術面での課題はクリアした。

有人手動運転での運行本数は事故前の65%に絞られている(編集部撮影)

シーサイドラインは事故から3日後の6月4日に有人手動運転で運行を再開したが、運転本数は事故前の約65%に減った。同社には専任の運転士がいないため、運転資格のある社員を総動員して運行にあたったものの、やり繰りに限界があるためだ。輸送力の確保へ、無人自動運転の再開は急務だった。

だが、7月下旬の時点では再開時期は見通せなかった。

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