ドラクエIXの発売延期、株価急落だが、業界には「やっぱり」の声
スクウェア・エニックス・ホールディングスは2月12日、3月末に予定していたニンテンドーDS向け人気ゲームソフト「ドラゴンクエストIX」の発売日を、7月11日に延期すると発表した。ゲームソフトの発売延期は珍しいことではないが、発売日が確定し、先行予約を開始してからの延期は業界でも異例だ。原因は、開発の最終段階での検証作業中に「重大な不具合が判明」したためという。
「ドラクエIX」の初回想定出荷本数は300万本。この大型ソフトの発売日が決算期をまたいで延期されたことで、スクエニは同日、今2009年3月期決算の下方修正を発表。子会社タイトーのアミューズメント事業の不振も重なり、営業利益で4割超の大幅な減額となった。
実はこの発表に先立ち、株式市場や業界では、すでに「もしや」の予感が広がっていた。同社の第3四半期決算発表日が、当初予定から1週間延期されたからだ。株価は2月5日に一時、前日終値より300円安い1880円まで急落。市場の予感は見事に的中したことになる。
同業他社からはぼやきの声が出ないわけではない。「ドラクエがこの時期に出るからと発売時期をずらしたタイトルもあるのに」--ある大手ソフト会社社長は苦笑する。実際、この時期の新作発売は賢明でないと開発スケジュールを調整した会社は少なくなく、今回の発売延期が今後の他社の発売計画に影響を与える可能性も考えられる。
ただ、ファンや流通関係者から聞こえてくるのは、「またか」「やっぱり」と総じて冷静な反応ばかり。「ドラクエ�」の当初の発売予定は07年。発売延期はこれで3度目ということもあり、恒例化してしまったようだ。東京・秋葉原のゲーム店も「予約客には延期が決まってすぐ連絡したが、クレームやキャンセルはない」「7月に発売はされるので店側に損失があるわけではない」など泰然としたものだ。
ゲームソフトは景気の影響を受けにくいといわれるが、昨年末ごろから流通サイドでは、資金繰りなどの事情から確実に売れる商品に絞って仕入れを集中する傾向が顕著になってきている。シリーズ累計4700万本以上を出荷した“横綱級ソフト”の発売を待ち望む声は大きい。
(勝木奈美子 =週刊東洋経済)
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