イタリア連立政権崩壊でまたも欧州の火種に 右派政権成立なら、EUとの対立激化は不可避

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ディマイオ党首率いる左派ポピュリスト政党の「五つ星」は人気が急落(写真:REUTERS/Yara Nardi)

財政不安を抱えるイタリアは、予算審議と重なる秋に総選挙を行ったことは第2次大戦後で一度もない。

連立組み換えの試みが失敗に終わった場合、大統領は議会を解散する決断をしよう。イタリアでは議会の解散から総選挙の実施までに45~70日空けることが法律で求められている。実際には60日程度の準備期間を設けるのが一般的で、今週中に議会を解散した場合、総選挙は最短で10月27日に行われると、予想される(同国では日曜日の総選挙が一般的)。

過去の例では、総選挙から政権発足までには最短で20日余り、最長で3カ月余りを要しており、この場合、政権発足は最短でも11月中旬にずれ込みそうだ。12月末までに財政運営をめぐるEUとの難しい協議を終え、来年度予算案を議会で可決するのは非常にタイトだ。イタリアは財政運営をめぐるEUとの過去の取り決めに基づき、約束した財政措置を来年度予算に盛り込まなかった場合、来年初から付加価値税(VAT)が自動的に引き上げられる。増税回避に残された時間は少ない。

今後のシナリオは3つある。第1は、予算審議を優先し、ひとまず暫定政権を発足し、予算成立後の来年春に改めて総選挙を行う。第2は、議会任期が満了する2023年春まで続く新たな連立政権を発足する。第3は、連立組み換えの試みが失敗し、秋に総選挙を行う。

「五つ星」と民主党の溝を埋めるのは難しい

イタリアでは政治危機に際して非政治家(テクノクラート)を首班とする暫定政権を発足させることが多い。ただ、暫定政権であっても、政権発足には上下両院の過半数の信任が必要となる。

五つ星運動と同盟のポピュリスト2党による現政権以外に政権発足が可能な組み合わせは、五つ星運動にかつての政権与党で中道左派の民主党と一部少数政党が協力する以外にはない。民主党政権を率いたマッテオ・レンツィ元首相は五つ星運動に対して暫定政権の発足を呼び掛けている。

ただ、反エスタブリッシュメント政党であった五つ星運動にとって、民主党やレンツィ元首相はこれまで攻撃対象としてきた政敵だ。民主党内も、復権の機会をうかがうレンツィ元首相に近いグループと、ニコラ・ジンガレッティ現党首に近いグループとの間に主導権争いがあり、一枚岩ではない。

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