(第8回)自分をいかに相手に伝えるか(前編)

(第8回)自分をいかに相手に伝えるか(前編)

佐藤孝治

●面接はPDCAサイクルがカギ

 自分が志望している企業に入社するには、エントリーシートにせよ面接にせよ、要は「自分のことをいかに相手に伝えるか」が最大の問題になる。
 どの会社の人事担当者も、入社した後に自社の利益を生んでくれる人、PDCAサイクルを回す力を持っている学生を見つけ出そうとしているのだから、学生はウソや誇張、過剰なアピールをする必要はないのだ。「こんな形でPDCAサイクルを回してきました。その結果、今こんな人になっています」と事実に沿って伝えるだけでいいのだ。

 私が尊敬しているコンサルタントの津田久資さんは、ご自身の著書『ロジカル面接術 実践編』(ワック)の中で次のような意味の指摘をしている。
 「面接で会社に伝えるべきメッセージは二つ。ひとつは『私は御社の社風に合っています』ということ(志望動機)。もうひとつは『私は利益に貢献できる能力があります』ということ(自己アピール)。この二つに整理できる。ただこの二つのプレゼンテーションのウエイトは、社風のほうは二割程度で、能力のほうが八割を占める」
 この津田さんの分析は、とても鋭いと思う。
 もし社風に合うか合わないか(=志望動機)を企業がもっと重視しているのなら、いくら能力の高い人でもそんなに重複して内定するはずがない。つまり、「自分はこれまでどれだけPDCAサイクルを回してきたか」を相手に納得させられれば、面接の目的の8割方はクリアできることになる。乱暴なようだが、これは実は私のこれまで見聞してきた数々の面接での実感と極めて近い。

●「志望動機」に大きな意味はない

 一般に面接では「選社理由」や「志望動機」が非常に重視され、志望動機をいかに「作るか」が内定獲得の必須条件のように思われているフシもある。しかし企業の人事の人にたくさん会って話を聞いてみると、多くの学生が思っているほど志望動機は重要視されていないのが現実のようなのだ。
 仕事経験の乏しい学生が、本音ベースの納得できる選社理由や志望動機を語れると思っている人事担当者はほとんどいない。志望動機を聞くのは、「どのくらい本気で会社のことに興味を持っているのか」、「事前の勉強をどのくらいしているかをチェックしておこう」といった軽いジャブ程度であることが多い。

 だから実際の面接の場面で志望動機を聞かれたら、今後の連載で紹介する会社を判断する7つのチェックポイントをうまく例に引きながら、「私は会社を選ぶ時、業界や業種といった観点よりも、まず自分が最も早く実力がつけられる会社はどこか、という視点で選びました。その結果、私が調べた範囲で自分が最も早く成長できると判断したのが御社でした。なぜならば…」と説明すれば十分だと思う。
 面接官によっては、「なぜ業界を絞らずに、いろんな企業を受けるのか」と聞く人がいるかもしれない。そうしたら「私は人が成果を出す能力というのは、どの業界、どの企業でも通じる共通性があると思います。まずそうした基礎的な能力を高めたいと思います。それに私はまだ学生で、企業社会の内部を本当に体験したことがないので、どの業界にどんな会社、どんな仕事があるのか、正直言ってよくわかりません。こんなに乏しい見聞だけで、『自分はこの業界、この仕事に向いているのだ』と決めていいものかどうか、確信が持てないのです」と答えればいいだろう。

 いずれにしても、志望動機そのものに強くこだわるのはあまり意味がない。よく「志望動機が言えなかったので落とされた」と言っている人がいるけど、たぶんそれは他にもっと本質的な原因があったか、面接官が、志望動機を理由にすると話が早いから、いちおうそう言っているかのどちらかだと思う。

●「ネタずれ」に注意してエピソードを選ぶ

 面接で自分をアピールするには、過去のエピソードを中心に具体的に話すべきだ、という点は、すでに常識であり、実際、大半の学生がそれなりのレベルで実行するようになっている。問題はエピソードの「ネタ」の選び方と、その加工の仕方である。「ネタずれ」といって、エピソードによって証明すべき事柄と、ネタの中身が噛み合っていないケースが非常に多い。これではいくらエピソードを一生懸命伝えても、「それがどうしたの?」という反応になってしまう。
 ゼミやサークルの幹事をやった話やイベントを成功させた話、アルバイトネタや海外モノといった定番のネタもあれば、彼女にフラれた話、道でお金を拾った話、大食い大会で優賞した話だって過去のエピソードには違いない。独自の面白い経験は思わずネタにしたくなるものだが、企業の採用面接ではそれを漫然と話すだけではダメである。そのエピソードの中にPDCAがどのように回っているかを明確に示して、自分のビジネス能力の証明につなげなくてはならない。(後編に続く

※「大学生のためのインターンシップ成功指南」は、「ジョブウェブ」から提供を受けています。


佐藤孝治(さとう・こうじ)
株式会社ジョブウェブ代表取締役社長
1972年東京都生まれ 早稲田大学社会科学部卒。
就職活動後、大学4年生の96年10月ジョブウェブを創設。 97年7月、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。
99年10月、ジョブウェブを法人化。
現在、株式会社ジョブウェブ社長として講演や勉強会などに全国を飛び回っている。学生の就職支援と企業の採用支援を通じて学生と企業の本音コミュニケーションをサポートしている。
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