都営住宅の建て替え計画に住民が大反発、狭小化で介護ベットも置けない《特集・自治体荒廃》

都営住宅の建て替え計画に住民が大反発、狭小化で介護ベットも置けない《特集・自治体荒廃》

26万世帯が暮らす東京都営住宅。昭和30~40年代に建設された団地の建て替えが進められる中、建て替え計画が入居者の反発を招く事態が各地で発生している。

東急田園都市線の池尻大橋駅から徒歩5分の交通至便な地にある都営大橋二丁目アパート(目黒区)。4棟、139戸が閑静な住宅街に立地し、徒歩圏内には大学病院もある。

2008年、この団地で建て替え計画が急に浮上した。

「07年3月に問い合わせた際、都からは5~10年は建て替えないと言われた。だが、08年1月に突然、都の担当者が測量に来た。そして理由もはっきり告げられないまま、建て替えるという話になった」

住民で自治会役員の中村敬夫さんが振り返る。

大橋二丁目アパートは1967(昭和42)年築。東京都は昭和30年代に建てられた都営住宅の建て替えを優先しており、40年代築の大橋二丁目住宅が建て替えられるのは当分先と思われていた。

ほかの地域の都営住宅と同様、大橋二丁目アパートには古くから入居している高齢者が多い。エレベーターはなく、風呂やガスなど水回りの設備も古いままだ。突然の建て替え計画浮上に反発する住民が少なくない一方で、当初、住民の半数は建て替えに賛同した。

だが、別の団地の見学を機に状況が一変する。昨年7月、住民は仮移転先となる新宿区百人町の戸山団地を見学。その居室を見た住民は愕然とする。現在の居宅より5~7平方メートルも狭くなるうえ、居室が一部屋になってしまうからだ。建物は比較的新しいが、同団地は高齢単身者が多く住むため、単身者向けの1DKタイプの部屋が多かった。大橋二丁目の住民も多くが単身者で、引っ越すとなると1DKタイプの部屋に入居することになるからだ。

建て替えに民間活力導入 1101倍の応募倍率も

戸山団地を見学した塚原悦子・大橋二丁目アパート自治会長は、「通気性が悪く狭い。家具を入れたらスペースがなくなって、人を招くこともできない」と指摘する。見学会後には、住民の大部分が建て替え反対に転じた。同自治会は08年8月に東京都に改善要望書を提出。当初の引っ越し予定は08年11月だったが、住民の反対運動で中ぶらりんになっている。「建て替え計画はこのまま立ち消えになってほしい」と、塚原さんらは願っている。

東京都は00年度以降、都営住宅の新規建設を行っていない。都内で住宅戸数が世帯数を上回っていることが、新規建設中止の理由だ。だが、低廉な家賃で一定の質を保つ民間の賃貸住宅は少ないのも事実だ。家賃が割安な都営住宅の応募抽選倍率は平均で35・7倍(08年11月度)という高水準になっている。

一方、建て替え戸数は年間3000戸前後で推移している。

都営住宅に対する都の政策を色濃く映し出しているのが、南青山一丁目アパート(港区)だ。青山一丁目駅から徒歩1分という都心の一等地に立つ同団地は、民間企業の活用によって、少ない費用で建て替えが行われた。

 具体的には、都が所有する都営住宅跡地6780平方メートルを70年の定期借地とし、三井不動産や大成建設を中心とする民間企業が再開発を行った。同敷地には、民間企業所有の地上46階379戸の高級賃貸マンション(右写真)と、14階建ての都営住宅が建てられ、都営住宅部分は都が買い取って従来どおり管理運営が行われている。建物内には、区立図書館や保育園、高齢者向けグループホームも設置されている。

場所のよさもあり、08年11月の抽選では、募集1戸に対し、1101倍という高倍率になった。

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