改革・成長の両立目指す中国の賭け 市場は懸念

拡大
縮小
1月28日、中国の景気減速がかつて猛烈な勢いで成長を遂げた他の新興国に影響を及ぼすと懸念する投資家には、北京の指導部に強力な味方がいる。昨年11月撮影(2014年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

[北京/東京 28日 ロイター] -中国の景気減速がかつて猛烈な勢いで成長を遂げた他の新興国に影響を及ぼすと懸念する投資家には、北京の指導部に強力な味方がいる。彼らには急速な経済の悪化を未然に防ぐ政策手段と、それに向けた強い意欲があるからだ。

政府系シンクタンクのエコノミストや中国ウォッチャーは、景気が急速に勢いを失い、金融システムや社会の安定が脅かされる事態に陥った場合、安定した持続的経済成長を志向する中国政府は行動を起こすとみている。

ただ、この励みとなるメッセージには警告も含まれている。中国政府はことしも成長目標を達成するかもしれないが、これ以上の政策ミスの余地はあまり残されていない。経済を安定軌道に乗せると同時に、改革も推し進めなければならないのだ。

民生証券のエコノミスト、LiHeng氏は「現在の景気は脆弱で、外的ショックに見舞われた場合の下振れリスクは非常に大きい」と指摘する。

投資と輸出主体で過去30年間続いた二けた成長路線から中国は意図的に方向転換を図り、消費やサービス主導のより安定的で持続的な景気拡大を目指していることはよく知られている。

しかし、弱い経済指標が出るたびにブラジルやオーストラリアをはじめとする世界の金融市場は動揺し、制御不能な景気悪化リスクや中国需要に依存する国が被る打撃に関して疑念の声が上がる状況となっている。

中国の見通しをめぐって最近懸念が広がったのは、HSBC/マークイットが先週発表した1月のPMI統計がきっかけで、製造業景況感は6カ月ぶりに節目の50を割り込んだ。

指標の発表は中国の金融市場が再び引き締まりの兆候を示した時期と重なり、問題の多い投資商品がデフォルトを起こすとの懸念とともに、他の新興国に懸念が広がって世界同時に市場が急落する一因ともなった。

中国の指導部は2014年の成長率目標を公式には発表しておらず、経済改革を優先するために従来の目標設定を撤回するのではないかとの憶測も飛び交う。それでも大半の識者は、当局は成長目標を示して市場を安心させるだろうと予想している。

中国政府は昨年11月に公表した大胆な改革目標のチェックリストを点検する一方で、中国人民銀行に金利や為替相場の柔軟化を促すとともに、行政手続きの簡素化や大手国有企業が支配してきた産業分野の民間開放を進めることで経済成長を達成するのだと識者たちは予想している。

リスクの高い貸し出し抑制を目指す中国人民銀行のキャンペーンは、政府が大幅な成長ペースの減速を容認しているためだとみることもできるが、一方で政策当局者は急激な景気減速によって失業や企業倒産が増加した場合には改革推進の計画はとん挫してしまうことも認識している。

次ページ成長率は維持
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT