安倍首相が認めたくない外交上3つの「悪夢」 トランプ大統領にだいぶコケにされている

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とはいうものの、安倍首相はこのことが一般の国民にどう映るかを懸念しており、トランプ大統領が直接日本のマスコミと話をすることを恐れて、トランプ大統領との短い首脳会談への報道陣のアクセスを制限したと伝えられている。

だが、サミット最後に開かれたトランプ大統領の記者会見までコントロールすることはできなかった。ここで同大統領はそれまでの発言を超えて、マスコミに対し「ここ6カ月の間に」1960年に締結された日本とアメリカとの相互協力および安全保障条約、つまり戦後のパートナーシップの基盤を変えるときだと安倍首相に伝えた旨を述べたのである。

安倍首相の唯一の外交成果に傷がついた

安倍首相および側近は当初、こうした会話がなされたことを直ちに否定したが、安倍首相はその後、トランプ大統領から私的な会話でこうした話を出たことを明かしている。一方、アメリカ軍事情に詳しいアメリカの複数の消息筋は、「同盟関係を再交渉するというトランプ大統領の呼びかけは初耳だ」と話す。彼らも、トランプ大統領のこうした発言は、「交渉のテーブルで譲歩を得る」ための試みととらえている。実際、これはトランプ大統領が韓国に用いた戦術でもある。

しかし、”被害”は起きてしまっている。「相互安全保障条約をターゲットにしたトランプ大統領の最新の一斉攻撃は、安倍首相の唯一の外交上の成果といえる、日米間の同盟関係はこれほど強力だったことはないという主張を傷つけるものであり、安倍政権には不安をもたらし、中国や北朝鮮の耳には心地よいものである」と、テンプル大学のジェフ・キングストン教授は述べている。

「安倍首相は、憲法第9条の改正への望みを今度の参議院選挙の焦点にしたが、これは、日本がアメリカの指令下で戦争をしなければいけないという意味ではないことを有権者に説得しなければならない」 

2つ目の悪夢は、トランプ大統領がG20直後、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と南北軍事境界線上板門店(パンムンジョン)で事実上3度目といっていい首脳会談を行ったことだろう。アメリカ大統領が国境を越えて、北朝鮮を数歩歩いたという「映像効果」に加えて、今回の会談の表面上の成果は、2月にベトナム・ハノイでの2度目の首脳会談の決裂後中断していた、公式レベルでの話し合いを再開することになったことだろう。

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