派遣切りが浮き彫りにした労働者使い捨ての企業論理《特集・雇用壊滅》

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派遣切りが浮き彫りにした労働者使い捨ての企業論理《特集・雇用壊滅》

製造業で働く派遣・請負労働者40万人が3月までに失業する--。1月27日の自民党・労働者派遣問題研究会で、製造派遣・請負の業界2団体は衝撃的な見通しを明らかにした。

実際、そうした「危機」の現場は日本全国にあふれている。

その象徴が、マスコミでも盛んに報道された東京・日比谷公園の「年越し派遣村」だ。労働組合と労働問題に取り組む弁護士が、反貧困ネットワークなど社会運動と合流して企画。当初は最大150人程度の入村者を想定していたが、最終的には約500人に膨れ上がった。

入村者たちがここにたどり着くまでの経緯を探ると、派遣村はさながら全国で吹き荒れる派遣や期間工、請負労働者に対する「非正規切り」の縮図であることがわかる。

「40年間生きてきて、ここまでひどい状況はなかった」。製造派遣の高木工業から派遣され、自動車部品大手のカルソニックカンセイの工場で働いていた男性(41)は語る。減産を理由に昨秋で雇い止めに遭い、派遣会社との契約も終了し寮を出た。

失業時の所持金は8万円。家族との縁も切れており、保証人を立てられないため家も借りられず、ネットカフェ等を転々としながら、職探しを続けた。日雇い仕事で食いつないだが、12月下旬を最後に仕事は途絶えた。年末の炊き出しで派遣村を知り、入村へと至った。所持金は5000円を割り込んでいた。「住まいを失ったとき、ものすごい絶望に襲われた。派遣という働き方に絶対的な不信感が芽生えた」と語る。

富士重工業の矢島工場(群馬県)で期間工として寮に住み働いていた男性(32)は、11月末に雇い止めに遭った。当初は工場近辺で仕事を探したがまるでなく、意を決して上京した。無料求人誌を手に片っ端からあたったが、やはり「住所不定」が災いし決まらなかった。所持金が尽きた年末には、上野公園で寝起きせざるをえなかった。かろうじて所持していた携帯電話のニュースで派遣村のことを知り、たどり着いた。

元日の朝、派遣村から日雇い派遣の現場仕事に出かける男性や、所持金ゼロで世田谷区から6時間かけて歩いてきた男性(51)、非正規雇用を転々として所持金が尽き、飛び降り自殺をしようとしたところ警察に保護され、派遣村に連れられてきた30代の男性などもいた。実行委員会によると、入村理由は製造派遣や日雇い派遣での仕事喪失が4割弱、派遣ではないが不況の影響で失業した人が2割を占めた。実行委員の棗一郎弁護士は「これは明らかに人為的につくり出された災害だ。大災害と同様の復旧作業が必要だ」と語る。

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