"知の巨人"が「どんどん書く」ことを続ける理由 佐藤優が教える「知的アウトプット」のすすめ

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考える力を鍛えるために、私がすすめたいのは、あるテーマについてネットなどの情報を参照せずに、文章を書いてみることだ。

本やネットなど、外部の情報をいっさい参照せず、純粋に自分の頭の中に定着している材料だけで考えをまとめてみる。すると、知識が抜けているところや、自分の考えが甘いところが浮かび上がってくる。

その時、できれば、書いた内容に関する知見の豊かな人に読んでもらい、コメントを得ることだ。仕事に関するものであれば、元上司など、直接の上下関係がない人にお願いするといいだろう。

あるテーマについての文章を、あえて参照不可で書いてみることは、いってみれば、自分で自分に課す筆記試験だ。これを繰り返すことで、学ぶ力は各段に底上げされていく。学生時代だけでなく、大人の学び直しにおいても筆記試験は有効なのである。

大人の学び直しに効くアプリはこれだ

大人の独学において、有用なのは、なにも書物や新聞だけではない。WEBサイト、アプリの中にもよいものがある。おすすめは「iTunes U」と「スタディサプリ」だ。

「iTunes U」では、日本の初等教育から大学、海外の大学などの授業を無料で視聴できる。ハーバードやスタンフォード、イエール、ケンブリッジといった欧米の一流大学の講義を視聴することも可能だ。一部、有名な講義には日本語字幕を表示させることもできる。

Apple製品には、デフォルトで「iTunes U」のアプリが入っている。Appleユーザーの読者は、試しに講義一覧を見てみてほしい。バリエーション豊かで驚くはずだ。

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一方、「スタディサプリ」は有料アプリではあるが、非常にコストパフォーマンスに優れた学習コンテンツとなっており、とくにすすめたい。

「スタディサプリ」では、小学校4年生から高校3年生までの学習範囲が網羅されている。小学校4年生といって侮ってはいけない。

一般的に、親が予習なしで子どもの勉強に関する質問に答えられるのは、せいぜい小学校2年生くらいまでだろう。教科書を読んでみると、小学校4年生のものですら意外と難しいのだが、それが非常にわかりやすく動画にまとめられている。

つまり、「スタディサプリ」が役立つのは現役の小中高生に対してだけではない。社会人になってからの学び直しにも、有効なのだ。

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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さとう まさる / Masaru Sato

1960年、東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。

2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。2006年に『自壊する帝国』(新潮社)で第5回新潮ドキュメント賞、第38回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『読書の技法』(東洋経済新報社)、『獄中記』(岩波現代文庫)、『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス)、『いま生きる「資本論」』(新潮社)、『宗教改革の物語』(角川書店)など多数の著書がある。

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