マイクロソフト、“戦略ミス”で思わぬ不振  5000人削減の過激リストラ

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マイクロソフトが5000人削減の過激リストラ、“戦略ミス”で思わぬ不振 

「修正計画後の売上高予想は下限が7%だが、2ケタ成長をあきらめていない」--

昨年11月、週刊東洋経済インタビューでマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOはこう語っていた(→関連記事。だが、フタをあけてみると、第2四半期(2008年10~12月)の売り上げは、下限見込みを約9億ドル下回る166億ドル。四半期では過去最高ながら前年同期比2%成長にとどまった。

不振の原因はパソコン向けOSの「ウィンドウズ」を担当するクライアント部門。他の部門がすべて伸びる中、同部門だけ前年同期比8%も減少した。ウィンドウズ不振の主因は、低価格パソコン「ネットブック」のシェアが上昇し、最新OSの「ビスタ」より安価に価格設定した一世代前の「XP」が売れるようになったため。これは景気減速の影響だけとは言い切れない。マーケティング戦略を誤った側面も多分にある。

経済環境悪化を契機に肥大化した組織を再編

“誤算”の結果を受けて、創業以来初めて全社単位の人員削減を行う。向こう18カ月以内に全従業員の約5%に相当する5000人分の業務を削減し、そのうち1400人は1月22日の決算発表当日に言い渡すという厳しさだ。削減は全世界が対象。日本でも08年7~12月上半期はゲーム部門など一部を除いて大幅な予算未達となったもようで、人員減に加えて5拠点に分かれた東京のオフィス統廃合などが課題になる。

四半期決算発表と同時に人員削減を明らかにした22日、バルマーCEOは今後の方策を詳述したメールを全社員に送付している。

その内容を整理すると、リストラの狙いは大きく分けて二つある。一つは短期的な利益の改善。10~12月期の営業利益は8%減の59億ドルとなった。これを回復させるため、人員削減に加えて出張旅費の20%削減や本社拠点の拡張抑制などで、09年6月期の営業費を15億ドル、設備投資は7億ドル削減する。

もう一つの重要な目的が、長期視点での体質転換だ。肥大化していたウィンドウズの製品開発やマーケティングなど本流部門をスリム化し、伸びが見込めるデータセンターの運営や大企業向けのカスタマーサポートは充実させる。人員削減の一方でバルマーCEOは「2000~3000人の採用も行う」と説明している。「開発部門のエンジニアは流動性が高くプロジェクトの節目で辞めていく。だが、セールス/マーケティング系のMBA保持者が辞めないため、組織が肥大化した。いずれはやらなければならない人員削減だった」(マイクロソフト関係者)。

それでもマイクロソフトの成長はなお続いており、10~12月期の営業利益率も35%と高い。まだ余裕がある。

より深刻なのはインテルだ。パソコンの中核部分を担う「ウィンテル(マイクロソフトとインテル)」の2社は高収益企業の代名詞。CPU(中央演算処理装置)を擁するインテルは、半導体メーカーとして突出した利益率を誇っていた。

だが、事業環境の悪化は避けられず、同社は昨年10月中旬時点で、7~9月期に比べ10~12月期の売り上げが3%増加すると予想していたが、11月に12%減へ下方修正。結果は20%減となり、複数の工場閉鎖や人員リストラ策を発表している。さらに09年1~3月期は初の赤字転落が懸念されている。

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