読売テレビの「性別質問炎上」に何を学ぶべきか 報道番組として少数当事者の声を忘れるな

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『かんさい情報ネット ten.』を毎日見ていたという関西出身の女子学生は「本当に不快な気持ちになった。十三は下町なので、百歩譲って町の人が下品で理解がないのは仕方ない。そういう人もいると思うので。でも、それをテレビで放送するのは違う」と非難した。

さらに、インタビューをした芸人の聞き方も問題視した。「男性なのか女性なのか普通に聞けばいいものを『苗字は?下の名前は?』と、触れちゃいけないものみたいに聞いているのがまず不快。そういうふうにコソコソ聞くのは嫌らしい感じ」と答えた。「最後に『おっさん!』と呼びかけたのも、見るに耐えなかった」と性的マイノリティーかと思われる人に対し、「人を傷つけても、『冗談』ですませようとするところにマジョリティーの押しつけを感じてそこもイヤだった」という。

「尋問のような映像、なにが楽しいのか」

また別の女子学生も「単純に人の性別に関する尋問のような映像を見せられて、視聴者はなにが楽しいのか」と番組制作の意図について疑問を投げかけた。

読売テレビに性別確認をされた人物に対して、朝日新聞が改めて取材して記事を書いて5月31日に配信している。記事によると、当人は自分の「性」について自問自答してきた人物だった。性指向では「アセクシュアル」(恋愛感情や性欲がない)、性自認ではどの性別にも当てはまらない「Xジェンダー」に近いと自覚しているという。ただ「説明がややこしい」ので「男ですよ」と答えたと話している。

つまり、実は当人はカメラの前ではそうとは言わなかったものの性的マイノリティーの1人だったのだ。そのことを想像もできなかった読売テレビのスタッフや映像を監修したプロデューサーも含めて、学生と比べてもあまりに鈍感と言うほかない。

性的マイノリティーの人たちを傷つけかねない今回の放送がなぜ起きてしまったのか。その再発を防止するためには「報道番組」であるという原点を思い起こして、番組制作にかかわる人たちが性的マイノリティーなどの実際の声を聞く機会を数多く設けるほかはないだろうと思う。

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