193億円赤字のライザップ、「結果」を出せるか 買収戦略の軌道修正を取引先銀行も注視

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グループ各社の持つ合計1200超の店舗網にも大胆にメスを入れることにした。業態転換の必要性がある店舗は黒字店であっても閉鎖することを決めた。ワンダーコーポレーション、アパレルの三鈴(2016年に買収)やアンティローザ(2014年に買収)を中心に、グループ全体での閉鎖店舗数は219店にのぼる見通しだ。

ライザップが買収したワンダーコーポレーションは、ゲーム・書籍などの物販を手がける「ワンダーGOO」やTSUTAYAのフランチャイズ事業も展開している(記者撮影)

これら店舗閉鎖や閉鎖に伴う商品在庫評価損などの膿出しにかけた費用は93億円にものぼった。損失がここまで膨らんだ原因は、成長を追求するあまりに買収そのものが目的になってしまっていたからだ。不振企業の買収が「暴飲暴食」になっていた。

その暴飲暴食を止めたのが、2018年6月にライザップ入りしたカルビー元会長の松本晃氏だった。

松本氏はライザップの取締役に就任した後、子会社の現場を積極的に視察した。そうすると、業績回復の手だてが思い浮かびもしないような企業が複数あることを知った。一方で、瀬戸社長は新たな買収をなお進めようとしている。松本氏は、「ライザップは成長と膨張をはき違えていた」と指摘する。

松本氏は「新規買収凍結」を進言

松本氏は、新規買収を凍結し、グループ各社の構造改革に着手すべきと進言した。その助言を受け入れた瀬戸社長は、2018年11月の中間決算時に当面の買収凍結を発表。子会社の経営再建を優先し、不採算店の閉鎖などを積極的に行うため、通期決算は最終赤字に転落する見通しを明らかにした。

それから約半年。瀬戸社長はかつてのように自信をみなぎらせる。だが、同社の主要取引銀行であるみずほ銀行の融資スタンスに記者の質問が及ぶと、神妙な面持ちになった。

決算発表と同時に、金融機関とのコミットメントライン契約の締結が発表された。そこからはライザップの置かれた現在の立場が透けて見える。同契約はみずほ銀行、りそな銀行、三菱UFJ銀行の3行が協調し、上限70億円の枠内で機動的に融資に応じるというものだ。

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