ココイチ、「ほぼ毎年値上げ作戦」成功のわけ 人件費や消費増税対応で利益は伸び悩む

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加えて、トッピングや辛さなどの組み合わせによって自分好みのカレーが選べるココイチは、“独占市場”を作り出しているともいえる。「ココイチでは値段を気にせず、自分の好きなようにアレンジして食べる」(別の20代男性)との声もある。熱烈な固定客が多いからこそ、段階的な値上げも受け入れられるのだろう。

値上げに成功して既存店売り上げも好調、となれば壱番屋の収益も順調に伸びそうなもの。しかし、前2019年2月期の業績は売上高こそ前期比1.5%増の502億円だったものの、本業のもうけを示す営業利益は44.4億円と、47.1億円だった前期と比べて5.7%の減益となった。

一段の値上げを実施して臨む今2020年2月期においても、値上げによる利益改善効果を11億円ほど見込むものの、営業利益はわずか1.9億円増の46.3億円にとどまる見通しだ。

人件費やポイント還元で伸び悩む利益

利益が伸び悩む理由の一つが、人件費の上昇だ。社員の賃金ベースやアルバイトの時給アップを背景に、人件費の増加基調が続く。また、10月に実施される消費税の軽減税率に対応するため、レジや受発注システムの更新費用が必要になる。

同時に、キャッシュレスで決済をした顧客に対するポイント還元費用ものしかかる。中小企業にあたるフランチャイズの店舗では、国の財源でポイントが還元される。だが、直営店は大企業にあたるため、国の還元策が受けられない見通し。

顧客からすれば外形上はフランチャイズ店と直営店の違いはわからず、ポイント還元が受けられる店とそうでない店があれば、混乱を招きかねない。そのため壱番屋では、本社が負担する形で直営店(全体の14%)でもポイント還元を実施する方針だ。

これらの一つ一つが重荷となり、値上げが浸透しても利益の大きな回復には至らない。際限なく値上げを続けるわけにもいかず、少なくともここ1~2年は我慢の時期となりそうだ。

佐々木 亮祐 東洋経済 記者

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ささき りょうすけ / Ryosuke Sasaki

1995年埼玉県生まれ。埼玉県立大宮高校、慶応義塾大学経済学部卒業。卒業論文ではふるさと納税を研究。2018年に入社、外食業界の担当や『会社四季報』編集部、『業界地図』編集部を経て、現在は半導体や電機担当。庶民派の記者を志す。趣味は野球とスピッツ鑑賞。社内の野球部ではキャッチャーを守る。Twitter:@TK_rsasaki

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