令和が受け入れられた理由は「意識の低さ」だ ネタとして盛り上がったことも一役買った

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いずれにせよ、令和という文字や発音に早く慣れ、早くも定着したのは、ネタとして盛り上がったことも一役買ったのではないでしょうか。

芸能人の不倫もネタ化で許される?

ネタ化がネガティブな要因を覆い隠してしまうケースは、ほかにもあります。下世話な例ですが、有名人の不倫報道もその1つです。世間から許してもらえず、いつまでも前の状態に復帰できない芸能人がいれば、笑って許されている芸能人もいます。許されないのは、「いい人だと思っていたのに裏切られていた」という感情が強いケース、許されるのはその話題がネタとして笑いにつながった場合です。

三遊亭円楽さんやダウンタウンの浜田雅功さんのように、芸人仲間からいじられて笑いに変わると、ネガティブなイメージは薄まります。ユーチューバーのヒカルさんは、女性関係を『週刊文春』にさらされましたが、自身のYouTubeでネタ化することで鎮火しました。俳優の袴田吉彦さんも、「アパ不倫」なるキャッチーなフレーズによってかえって許されたのではないでしょうか。

そもそも他人の不倫になぜ人が怒るかというと、「なんか腹が立つ」という意識の低い感情です。本当に意識の高い人は、他人の不倫などに興味を持ちませんし、社会性のある話題ではありません。不倫が増えている社会背景、みたいな考察はありえるでしょうが。もちろん、世間には笑って許してもらえても、当事者となる配偶者に許してもらえるかは別の問題です。

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ネタ化、ウケ狙いによってネガティブな要素がすべて許されるかというと、そう単純ではありません。政治家の不倫、女性関係のトラブルは一般人よりも厳しく批判されますし、笑いでカバーするのは難しそうです。

さらに、度々問題視される政治家の失言は、このウケ狙いが原因となっています。政治家の失言は、大抵が講演会など、内輪での発言です。それが、外に漏れて批判されます。政治家との発言として正しいか否かは、ある程度意識の高さから来る判定です。そして、それがNGだとされると、マスコミが大きく報道し、一般の人も怒り、大臣なども辞任に追い込まれます。

毎度「なぜ、政治家の失言が後を絶たないか」と嘆かれるわけですが、政治家も人気商売の側面があり、話題をネタ化することでウケようとする習性が大本の原因といえるでしょう。笑いをとろうとすると、どうしても、人々の意識の低い部分に合わせてしまい、不適切な表現が入ってしまうのです。実際に、その場ではある程度ウケるんでしょうし。

(図版作成:筆者)

また、政治家の場合も、芸能人と同じように、同じ行為・発言でも許される場合と許されない場合があります。石原慎太郎元東京都知事や麻生太郎財務大臣などは、失言も大きな痛手には至らないのですが、これは知名度が高くキャラクターが確立されているせいでしょう。「なんか許しちゃう」も意識低めの感情です。

新しい元号と芸能人の不倫、政治家の失言。それぞれ関係のなさそうな出来事ですが、その反応には人々の意識の高低とそれがポジティブ、ネガティブどちらに振れるかが大きく影響することをおわかりいただけたでしょうか。

小口 覺 ライター、コラムニスト
おぐち さとる / Satoru Oguchi

1969年兵庫県生まれ。明治大学法学部卒業。ITや家電を中心に各業界のモノとビジネスのあり方をウォッチ、『DIME』『日経トレンディネット』などの雑誌やウェブメディアで活躍する。

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