東京のバリアフリーに足りない「観光客目線」 英語で観光情報を伝える車いす生活者の思い

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「ウェブサイトを作ったのは、日本に何か恩返しがしたい、日本の役に立ちたいと考えたからです。初めて日本に来たとき、バリアフリーの情報だけでなく、英語の観光情報自体がほとんどありませんでした。障害のある人たちがもっと簡単に日本に来ることができるようになればと思い、自分があったらいいなと思う情報をアップしています」

グリズデイルさんに東京のバリアフリーの現状と課題について話してもらった。まずはホテル。グリズデイルさんの実感では、東京都内のバリアフリーのホテルは決して多くない。サイトでは4月8日現在、東京都内の67のホテルを掲載。バリアフリーの客室の広さや、浴室のシャワーチェアや手すりの有無、トイレの背もたれの有無などを解説している。

問題はバリアフリーの部屋を複数持つホテルがわずかしかないこと。最も多いのは新宿区の京王プラザホテルで13室。三井ガーデンホテルは6室あるところが2カ所、3室あるところが1カ所あるが、そのほかのホテルでは1室しかないところが多い。

外国人が予約しづらいバリアフリーの部屋

しかし、問題はそれだけではない。現状では外国人がバリアフリーの部屋を探すこと自体が困難だという。

「ほとんどのホテルのホームページは、バリアフリーについて日本語では書いていますが、英語版のページには書いていません。それに多くのホテルがメールアドレスを掲載していないので、外国人は連絡が取りにくいのです。電話では英語が通じているのかわからないことも多く、不安になります」

日本のバリアフリーの部屋を調べているうちに、グリズデイルさんが驚いたことがある。それはスタンダードの部屋しかないことだった。アメリカのホテルでは、デラックスルームやスイートルームなど、すべてのグレードの部屋にバリアフリーの部屋がある。

「おそらく日本のホテルの関係者は、障害のある人はお金を持っていないと思い込んでいるのだと思います。しかし、そんなことはありません。先日、ラグビーのワールドカップを見に東京に行きたいという問い合わせがあり、その方は5つ星ホテルのバリアフリールームを5週間予約しました。車いすユーザーにもビジネスで成功している人はいますからお金がないと思うのは間違いです」

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