創業174年、ハチ食品がカレーにこだわる理由 「国産カレー粉」第1号企業のサバイバル戦略

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しかし、OEMが主体だとどうしても価格決定権も握れず、自立性の点で制約を受ける。そこでハチ食品では徐々に自社ブランドでの販売を増やしていく。その転機となったのが、1990年のレトルトカレー販売開始、家庭用カレー市場への再挑戦である。

レトルトカレー「カレー専門店のビーフカレー中辛」(画像:ハチ食品)

レトルトカレーは、すでに1968年に大塚食品が「ボンカレー」を発売、その後グリコ、ハウス食品、ヱスビー食品といったブランド力のある大手食品メーカーが手掛けており、この時期の新規参入については社内でも反対の声が上がったという。

しかし、研究開発部門の「独自路線のハチ食品だからこそ他社とは違う味を提供できる」という声に後押しされて進出を決断する。

当然先行他社との差別化も図り直接の競合を避けた。品質も業務用に近いものにし、販売も百円ショップやドラッグストア、ディスカウントストアといった当時は大手メーカーがあまり目を向けなかったルートから入っていった。大手との競合を避ける販売チャネル戦略をとったのだ。

6工場体制を築いた

その後こうした業態の小売店が急拡大し、現在では大手の参入が激しくなってきている。結果的にハチ食品の先見性が証明された格好となった。2000年には長野県駒ヶ根市にレトルト食品専用工場を建設した。現在の生産体制は駒ヶ根に2工場、兵庫県宍栗市でカレー、スパイスの工場を4工場、合計6工場体制を築いている。

レトルトカレーの市場規模は増加を続け、2017年にはついにカレールウを上回った(インテージ調べ)。共働き世帯や単身世帯の増加などで時短ニーズや個食ニーズが高まっていることが要因と言えそうだ。

『るるぶ』とのコラボから生まれた「福岡もつ鍋カレー」(画像:ハチ食品)

需要の高まりにともない、レトルトカレーも多様化し、ご当地カレーや名店カレーが各社から発売され商品のバリエーションも広がってきた。

ハチ食品でも2018年に旅行雑誌『るるぶ』を展開するJTBパブリッシングとのコレボレーションで「るるぶ×Hachiコラボカレーシリーズ」と銘打ち、京都・北海道・福岡・沖縄の4地域の食材を使ったご当地レトルトカレーを展開、書店の旅行コーナーに陳列販売されるなど販売チャネルの開拓を図る。

また、自動車のショールームで来場者へのノベルティーグッズなどに同社のレトルトカレーが採用されるなどレトルトカレーの市場がさらに広がっている。

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