米国「市場原理主義」の真実、ルールと規律の放棄で格差と危機が大増幅

勝利の夜、バラク・オバマ米次期大統領は高らかに宣言した。

「建国者たちの夢は今もこの国に生きている。もし、それを疑う者がいるなら、今夜がその答えだ」

だが、今、目の前で起こっていることが「夢」であるなら、それは悪夢以外の何ものでもない。

貧者のマイホームの夢を実現すると喧伝されたサブプライムローン。一気にハネ上がる変動金利に追われ、すでに住宅ローンの10%が延滞ないし差し押さえの状態にある。

一方、サブプライムを証券化商品に仕立て上げ、世界中に売りまくったウォール街の巨大投資銀行。2002年以来、ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーなど投資銀行上位5社が社員に払った報酬総額は3120億ドル(29兆円)に上る。米政府が金融機関に注入する公的資金7000億ドルの45%に相当する。

のみならず、米ウォールストリート・ジャーナル紙の調査によれば、有力金融機関は自社の経営陣に計400億ドルの「借金」を負っている。中身は年金と後払い報酬だ。報酬の後払いは会社にすれば当面のキャッシュを節約できる。経営陣にとっては節税効果に加え、会社が“責任をもって”留保報酬を運用するため、受け取り時には運用益がオンされる。

貧しい米国民の夢を食い物にし、がっぽり儲けた連中は、ちゃっかり後々まで自分の懐が温かくなる仕組みを“整備”している。

監督官庁は何をしていた

しかも、公的資金の注入額がどこまで膨らむか、見当もつかない。早くも、底の見えない恐怖が現実のものになったのが、世界最大の保険会社、AIGのケースである。

簡単におさらいしておこう。リーマン・ブラザーズを倒産させた翌日、米政府はAIGに850億ドル(8兆円)を緊急融資した。AIGは総額54兆ドル(5022兆円)のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)最大の売り手だった。CDSは倒産保険だ。CDSを買っておけば、債権保有者は当該債権が弁済不能になっても、CDSの売り手(=AIG)から弁済してもらえる。

CDSはさまざまな証券化商品の中に部品として組み込まれている。AIGが倒産すれば、CDSが決済不能となり、総額6京円ともいわれる証券化商品・デリバティブ市場が崩壊する。世界の終わりである。

救済はやむをえない。だが、AIGに融資された850億ドルは、2年かけてゆるゆる使っていくはずだった。ところが、たった2週間で610億ドル、7割強が消えてしまった。米政府は378億ドルの追加融資を余儀なくされることになったのだ。

そもそも、計算が甘かった。CDSが保証する証券化商品は「スーパーシニア」と呼ばれ、原債権(たとえばサブプライム)の4割がデフォルトしても損失が出ない計算だった。だから、AIGは自己資本の4倍のレバレッジをかけ、CDSを膨らませたのだが、実際には、証券化商品の価格は4~8割も下落した。

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