NGT、厚労省、日大にみる第三者委員会の不可解 不祥事になると必ず出てくる「伝家の宝刀」

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実際にこの問題をめぐっては、AKSから発信される情報は極めて少ない。その結果、マスメディアだけでなく、ファンの臆測や誹謗中傷がネット上に氾濫し、大変な混乱を招いてしまった。SNSなどに頻繁に書き込まれる内容を見て、「NGT48のメンバーの心はとても傷付いていてケアしきれない」(大手芸能事務所関係者)と、嘆く声も漏れてくる。

ところが、この問題の検証・解決に向けた第一歩となるであろう委員会の発足に期待し、選ばれた3人の委員による記者会見が行われるものと待っていたが、そういった案内は一向に送られてこない。筆者から委員長を務める岩崎弁護士の事務所に電話し、取材依頼をすると、応対した事務職員からこんな応答が返ってきた。

「この件に関してはこちらでは何も話せません。取材の可否など含め、すべてAKSさんを窓口にしていますので、そちらにお尋ねください」

取材対応の判断を依頼者AKSに委ねるようでは、この第三者委員会設置にあたって準拠したという、日本弁護士連合会の「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年に作成され第三者委員会方式で調査を実施する際に広く普及している基準)が求める委員会の「独立性」という点で、非常に問題だ。

そこで、多くの企業不祥事で第三者委員会の委員長を歴任(NHK「職員の株取引問題に関する第三者委員会」委員長など)、日本銀行のコンプライアンス会議メンバーで日弁連のガイドライン策定の中心人物でもある、久保利英明弁護士(日比谷パーク法律事務所)に見解をただした。

日弁連を安易に権威づけに利用するな

第三者委員会の報告書を格付けする久保利英明弁護士は、NGT48問題についても手厳しい(2018年3月、撮影:尾形文繁)

――第三者委員会が依頼者であるAKSを自らの窓口にしようとする発想はいかがなものでしょうか。

その時点でアウトでしょう。独立性も何もあったものではない。スタートからつまずいている。第三者委員会の経験の何もない弁護士がやっているのか。そもそもの趣旨を理解していないと言わざるをえない。誰がどのようにして委員を選定したのですか。

――「法律家としての見識に優れ、中立性、公正性を確保できるうえ、第三者委員会の経験が豊富な方」を選んだと、公式サイトにAKS代表取締役と運営責任者兼取締役の名義で掲示されただけです。

現在、日本取引所自主規制法人が公表している「上場会社における不祥事対応のプリンシプル」は、委員の選定プロセスにも配慮を求めていて、委員の独立性・中立性・専門性について詳細な記載が求められるのが通例になっています。

社外取締役が選任したと推測しますが、誰がどのように選定したか明らかにしなければ、委員会の信頼性は薄い。第三者委員会の組成の仕方に、すでに企業のスタンス、自浄能力があるかないかが如実に表れてしまう。だから第三者委員会は“怖い”んですよ。

――ならばAKSのスタンスはどのようなものだと思われますか。

「日本弁護士連合会による『企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン』に沿って選定しており」と書いてあるが、日弁連を安易に権威づけに利用しないでほしい。この委員会も「臭い物に蓋をする」ために持ち出してきたものだろう。おそらくこの件の真実が出せないことから、第三者委員会を“隠れみの”として使いたいだけだろう。まともな報告書が出てくるとは思えない。

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