金もコネもない25歳が「人気財布」を作れた理由 異例のヒットの裏にあるWebサービスの支え

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他人のVAを購入するにはビットコインが必要となる。自身のVAがたくさん売れない限り、十分なビットコインは手に入らない。最初はそれほど買い手がつかないため、自らビットコインを投入することになる。中島さんは当初、5万円ほどビットコインに換金し、そんぷ〜さんから1VAを購入した。

身銭を切ることになるので、単にツイッターやフェイスブックで連絡を取り合うより、本気の人同士が結びつきやすいのかもしれない。

高知の財布はしばらく在庫切れの状態が続いていたが、現在は販売を再開しており、安定した人気を保ち続けている。財布のヒットでさぞやVA価格も上昇したかと思いきや、それほどでもないという。

「VALUの売買って、まだまだ友人同士であったり、交流会で知り合った人同士で売り買いされることが多いんです。投機的な売り買いもあるので、必ずしも現実の社会評価がストレートに反映されるわけではないようです」

活動内容に共鳴してVAを買うというより、交流会で知り合った相手のVAを挨拶代わりに購入するケースも多いようだ。売買の量を意図的に調節して価格をコントロールするなど、マネーゲーム的な側面もある。VALUのサービスが始まった当初、ユーチューバーのヒカル氏がルールの不備を突いて自身のVAを高値で大量に売り抜け、問題視されたケースもあった。

VALUのメリット、デメリット

VALUの試みは面白いが、まだまだ実験的な段階と言えそうだ。SNSのフォロワー数に基づいて社会的評価を算定するため、ネット上で露出の多い人気者の評価が高くなりがちで、地味で目立たないコツコツ型の人間は評価されにくいという面もある。

また、そもそもビットコインの価格変動が激しいため、日本円に換算した場合の「評価」が非常に不安定とも言える。

それでも、個人の価値をお金に換算するという「評価経済」の理念は、決して悪いものではない。

「自分の評価を下げないように、僕のVAを買ってくれた人の期待に応えられる人物でありたいので、いつも身ぎれいにして全力で頑張っている姿を見せなくてはと思っています。自分のモチベーションを高める効果もありました」

VALUは「叶う夢を増やそう」をテーマに「なりたいものや、やりたいことを実現するために、継続的に支援を募ることができるSNS」とうたっている。今は”新しすぎて”社会全体にまでは浸透していないが、フリーランスの芸術家やデザイナー、起業家など、個人単位で活動する人々の間では少しずつ広がりをみせている。今後どのように成長していくか、注目していきたい。

西谷 格 フリーライター

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にしたに ただす / Tadasu Nishitani

1981年、神奈川県生まれ。ノンフィクションライター。早稲田大学社会科学部卒。地方新聞の記者を経て、フリーランスとして活動。2009年に上海に移住、2015年まで現地から中国の現状をレポートした。主な著書に、『ルポ 中国「潜入バイト」日記』 (小学館新書)、『中国人は雑巾と布巾の区別ができない 』(宝島社新書)などがある。

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