「起業家うつ」を救ったビジネスコーチの教え 対話を通じて自分の中にある答えを導く存在

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さらに、コーチ自身も私のよき「壁打ち」相手であった。社員には打ち明けられないような悩みも相談できたし、そこでもらった助言が結果的にビジネスに活かされるということも多々あった。また、相手の考え方を理解することや社員との接し方なども、コーチとの面談から多くを学べたと思う。コーチと面談し、課題を与えられて取り組むうちに、私も前向きな気持ちを取り戻し、精神状態はすっかり改善されていった。

心が病んでいたときは、アメリカという未知の市場で採用する際にも弱気な対応をしてしまう。例えば「日本人として差別されないか?」とか「英語がネイティブでないことで舐められないか?」というマイナスな視点で人を見てしまう。

しかし、コーチングの効果で本来の自分を取り戻すことができたおかげで、現地の人に対しても自身の夢やビジョン、ビジネスを自身と誇りを持って語り、そのことが人を惹きつけ、口説き、採用につながる、というポジティブな方向に転換していった。メンタル面が事業に及ぼす影響の大きさをまさに肌で痛感したのである。

メンタルが事業に及ぼす影響は大きいと実感

改めてコーチングのスタートは自分自身の心の状態や自分自身の強みやルーツを知ることであり、それが最終的には行動や判断というものにつながる。例えば、ビジネスにおいて重要なパートナーを探すという重要なアクションにつながった。また経営やビジネスで現れるあらゆる事象も相談の対象となった。「2名の候補者のどちらを採ったほうがよいか?」「この事業を撤退したほうがいいのか?」「社員と経営陣のマインドギャップがある」など迷ったときに何度も相談し、解決していった。

先生はビジネスの専門家ではなく、とにかく自分の考えや軸について聞いてくる、そして答えているうちに自分で気づきがあり、自分で最後は迷いのない決断ができる、という具合である。

経営本やMBAなどで得られる戦略、戦術は知識としてあるが、実際ビジネス現場で起こる課題は、それぞれの企業の成長段階、組織文化、業界、地域などによって千差万別であり、そこを解決するには自分や会社の軸、例えばビジョン、ミッションなどを基に納得ある判断をしなければならないということである。

1つの夢を達成した中で燃え尽き、海外に挑戦するというチャレンジの中で苦しみ、メンタルがきつくなる中でコーチと出会った。そして自分自身と向き合い、次の自分のミッションについて考え、言語化し、新たな夢や目標を得ることができた。また自身の心や脳、気持ちを休めることでパフォーマンスを上げられるというところに行き着くことができた。

「世界で勝負したい」という思い1つでここまでたどりついたが、コーチとの出会いがなければ、今の自分も、今の会社の成長もなかったかもしれない。

楠山 健一郎 プリンシプル代表取締役社長

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くすやま けんいちろう / Kenichiro Kusuyama

1973年埼玉県生まれ。1996年国際基督教大学卒業。同年シャープに入社。2000年サイバーエージェント入社。2001年トムソン・ロイターグループ入社。2007年トムソン・ロイターメディア事業部門の日本責任者に就任。2010年オークファンに入社し執行役員に就任。2011年プリンシプル設立。

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