「起業家うつ」を救ったビジネスコーチの教え 対話を通じて自分の中にある答えを導く存在

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日本では精神科医やカウンセラーに心の病を相談するというケースはある。カウンセリングはこころが病んでいるのを治すことに対し、コーチングは今の自分をよりよくする、パフォーマンスを上げることにフォーカスしている。

とくに若手起業家の多いシリコンバレーでは、コーチングは盛況だった。さらに驚いたことに、アメリカではコーチングをしていることを公言することは「ステータス」という話も聞いた。自己成長意欲が高く、経済的にも投資できることの証明という理由からだ。

自分の中にある答えに気づかせてくれる

私も複数のコーチにアポを取って悩みを相談した。10人ほどのコーチに会ったが、「シリコンバレーでは今、この本が流行っているから読んだほうがいい」など、かなり具体的で有用な情報が得られた。最終的にはスタンフォード大で「マインドフルネス」を教えるスティーブン・マーフィ重松教授の夫人、マーフィ重松ちな先生に決めた。

実際のコーチングでは、「なぜアメリカに来たかったのか?」「あなたしかできないミッションはなにか?」という問いを投げかけられ、その答えを一緒に並走しながら見つけていく作業である。最終的に答えは自分の中にあり、その気づきを出すのを助けてくれるのがコーチである。

そのコーチとのやりとりの中で「どういうときにいちばんワクワクするか、どんなときにいちばん喜びを感じるか?」と質問され、私は「リーダーシップを発揮して自分のチームを指揮し、勝利を喜び合っているときだ」と答えた。

するとコーチから「あなたはリーダー気質で、グループがあってこそ生きる人なのに、アメリカに独りでいるからパフォーマンスを発揮できないのだ」と指摘された。確かにうなずけることだった。そこでコーチから「次回会うまでに、仲間をどこで、何人見つけるかを考えなさい」と宿題を出された。

結果、アメリカのSNSや、アドバイザー・コンサルタントのマッチングサイト経由で何人かと会い、彼らと小さなプロジェクトをやることで信頼のおけるパートナー選びを同時に進め、最終的に現地で会社を自身で一から起業し、成功して売却したアメリカ人と一緒にビジネスを立ち上げることにした。

また私は人との会話の中でアイディアや気づき、そしてモチベーションを高めるタイプであることも改めて気づかせてもらった。確かに私は日本での創業当時も、副社長と意見の「壁打ち」をしながらやってきた。そんな壁打ち相手となるビジネスパートナーを見つけたことが契機となった。

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