新幹線車内販売、「神泡」ビールが流れを変える? 各地で廃止相次ぐが東海道は「攻め」の姿勢

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新幹線の中での“生ビール”販売。門外漢からすれば簡単そうだが、これがなかなか難しかったようだ。それこそ食堂車のような施設があれば、ビールサーバーを積み込むこともできようが、東海道新幹線ではそれはかなわない。

野球場の売り子のごとくでっかいタンクをパーサーに背負わせるというのも非現実的だ。では、一体どうして新幹線での「生ビールの泡」が実現したのか。

「サントリーが新たに開発した、電動式神泡サーバーを使い、缶ビールでもクリーミーな泡を作り出してご提供いたします」

こう説明してくれたのは、サントリービール株式会社プレミアム戦略部・水谷俊彦部長。どういうことかというと、缶ビールに取り付けて注ぐときにボタンを押すと、超音波でわずかな振動を起こしてクリーミーな泡を作ることができるものだとか。

ウマい泡の作り方

これまでも似たようなサーバーはあったのだが、震えるサーバーを通してビールをグラスに注ぐ構造だったため、使うたびに洗浄が必要だった。そのために衛生面から車内での販売には使えなかったという。

「今回開発したサーバーは、ビールそのものはサーバーに触れずに洗浄なしで繰り返し使えます。ですので、このタイミングでぜひ東海道新幹線をご利用の皆さまに“生ビールさながら”の高品質な神泡を楽しんでいただければと」(水谷部長)

超音波の振動がクリーミーな泡を作る(撮影:尾形文繁)

実際に車内販売での提供の様子をデモしてもらった。パーサーが缶ビールにサーバーをセットして、まずは普通にグラス(車内ではプラカップだが、気持ちの問題で“グラス”と言わせていただきたい)に注ぐ。

ずいぶん慎重に注いでいるな、と思って聞いてみると「ここで泡が立つと泡とビールの比率が悪くなっちゃうので」とのこと。グラスを傾けてゆっくり注ぐというお決まりの“泡立たない注ぎ方”で丁寧にビールを注ぎ、7割方注ぎ終わったところでサーバーのボタンを押す。いよいよ神泡の出番だ。

そうは言っても目に見えない超音波で振動を起こしているのだから、見た目には何も変わらない。もちろんパーサーの手にも振動が伝わることはないという。超音波で神泡を作り、ゆっくりとグラスに注げば完成である。確かに、見た目には単に缶ビールを注いだのとはまったく違う、クリーミーでいかにもウマそうな生ビールであった。

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