外国人は全員「呼び捨てOK」という怖い勘違い 敬語はないが、敬意を払う必要はある

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こういう話をすると、異なる言語、異なるカルチャーの人に対し「空気を読み、敬意を表す」というのは、いかにも難しいことに思えてきます。これについては、従来は、どのようなバックグラウンドの人でも英語圏(主にアメリカ)の文化を身に付けることが「国際的なビジネス感覚」と言われていたように思います。

しかし、近年では「ダイバーシティー(多様性)」という言葉が浸透してきました。文化や慣例を単一のものでまとめるには、世界は複雑すぎるという考え方、といってもよいかもしれません。

異なる文化・言語圏出身者がそろっているからこそ

多様性については、私の勤めているレノボが面白い例になると思います。現在のCEOは中国人で、会議ではしきりと中国の古典を引用し、イタリア人COOはフェラーリやドゥカティのモータースポーツチームを応援し、携帯のモトローラ事業のトップは世界で初めて携帯電話を作ったモトローラの伝統に誇りを持つブラジル人です。

さらに言うと、アメリカの本社にいる人でもIBMのPC事業出身者はかなりコンサバな考えの持ち主だったり、同じアメリカ人でも西海岸の若い企業から転職してきた人は非常にカジュアルだったりします。それでもやはりグローバル企業である以上は英語をコミュニケーションプラットフォームとして選択します。

ただし礼節や慣例までも英語式でなければいけないか、というとそうではありません。基本は英語圏の文化とするものの、カルチャーの違いからくるギャップについては寛容でいようという暗黙のルールがあるように思います。

時折、明らかに英語圏でない人のプレゼンテーションを聞く(聞かざるをえない)ときもあります。英語を越えたプレゼンの内容に価値があれば、ところどころ表現に違和感があったとしても、こういう優秀なる異論を切り捨ててはいけない、というのがレノボの考えです。

前述の幹部メンバーは誰も英語圏出身ではありません。異文化・多言語の環境に身を置く苦労を経営陣が身をもって知っているからこそ、レノボには寛容な社内カルチャーが醸成されたのではないかと思います。

今回のポイント。英語に敬語はない、けれどもやっぱり上司やお客さんには失礼のない態度が必要。言葉が通じなくとも、態度は相手に伝わる。ただし多様性の時代、互いに対する寛容さがこれまで以上に重要。これは日本語でも同じですね。

それではまた次回!

デビット・ベネット テンストレント最高顧客責任者

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David Bennett

1979年にジャマイカで生まれ、カナダ国籍を持つ。カナダトロント大学大学院卒。早稲田大学にて日本語を習得、学習院女子大学大学院にて日本古典文学を学ぶ。東京でコンサルタントとして社会人キャリアをスタート。AMD社コーポレートバイスプレジデント、および同社のレノボアカウントチームのゼネラルマネージャーを務め、コンシューマー、コマーシャル、グラフィックス、エンタープライズプラットフォームなど広範な事業を手掛ける。2018年5月レノボ・ジャパン社長に就任、2022年6月から現職。古典文学が好き。

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